創作が笑われることすら肯定してくれるから
もともと創作バディものが好きなんですけど、そのなかでも群を抜く傑作だと思うのが『ディザスター・アーティスト』。“史上最高の駄作”としてカルト的人気を誇る映画『ザ・ルーム』の監督トミー・ウィソーと主演俳優グレッグ・セステロの実話を基にした、映画作りにまつわる青春映画です。
創作に関わるすべての作り手にとって一番怖いのは、全身全霊をかけて作ったものが笑いものになることだと思うんです。だから、自分の監督作のプレミア試写で観客から笑われて席を立つトミーの心境は痛いほどわかる。僕も編集者に漫画のネームを見せる時は自信がなくてすごく怖いので。
でもこの映画は最終的に、その笑われることすら“何もないよりいいじゃん”と肯定してくれるんです。自分の表現を見せて、他人からリアクションがあるというのは、それがどんなものであれ素晴らしいじゃないか、と。だから、観返すのも不安になった時や勇気を奮い立たせたい時が多いですね。
自分には一緒に漫画を志す友達や師匠はいなかったんですけど、この映画が「おい、一緒にやろうぜ」と叱咤激励してくれる友達のような存在です。『ディザスター・アーティスト』が僕にとってのトミー・ウィソーなんです。