自分の芯がブレてないか、号泣してでも確認したいから
中学生の頃、親父が「『男はつらいよ』と『仁義なき戦い』を観れば、学校に行かなくても十分学べる」と言ったのを信じて、その通りにしていました。学校をサボって、夜通しで親父とこの2つのシリーズを観ましたね。それから少しして前座修業中、瀧川鯉八さんに「兄さん、山田洋次ならこれも面白いですよ」と薦められたのが『学校』です。
僕は『男はつらいよ』で山田洋次を知り、『学校』で監督自身を好きになりました。この作品は観るたびに冒頭から泣きっぱなし。観るたびに人情の大切さを再確認できるんです。今の自分がブレてないかチェックできる大切な映画です。
舞台は夜間中学校。様々な事情で学べなかった老若男女が同じ教室に集うんです。教師役は西田敏行。生徒たちが、どんな人生を歩んで教室に辿り着いたかを知り尽くして、尊重しながら接する。その人情が沁みます。田中邦衛演じるイノさんは肉体労働で生きてきた苦労人。読み書きはできないけど、競馬好きだから競走馬の名前は書けるし、競馬実況は、立て板に水で再現できる。
こんな人間らしさを描ける監督の頭の中はどうなってるんだ、と不思議でならない。いつか息子にも観せたいけど、僕は隣でボロボロ泣いちゃうでしょうね。