言葉で説明できない感情を考えるきっかけにできるから
『海獣の子供』は予告を観てからずっと気になっていたんです。だけど公開時に映画館には行けなくて、2020年に配信に入ってから観ました。まだ多くは観られていないんですが、今改めて観直したいと思える作品です。
最初はアニメーションで表現された水や生き物の画力に圧倒されました。特に宇宙と海が混じり合った“生命の誕生”のシーンは大好きです。観返すたびに大きなスクリーンで観たかったなと思います。映画館は、映画好きの父親の影響で小さい頃からよく家族で行っていたんです。
だから今でも、映画は音響が良くて大きなスクリーンのあるところに限ると思ってます。家でもプロジェクターで映して、途中停止せず一気見するのがこだわりです。最近、『砂の女』や『壁』など安部公房の小説を読んで人間について考えることがあるんですが、哲学的に惹かれるのは『海獣の子供』も同じ。生命同士がつながっているという世界観や「人間と宇宙は似ている」という台詞には、すごく共感しました。
それから、「大切なことは言葉にできない」というこの作品のテーマについても考えさせられました。言葉は思ったことを伝えるのに便利な手段だけれど、限りがあるんですよね。そもそもこの映画自体が、テーマを言葉で説明するのではなく、映像で語っていて。
一人一人が自分の中で観たものを噛み砕いて考えさせる作りになっています。そういう作品は、繰り返し観ることで、自分の考えがより深まっていく気がしますね。