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翻訳家・村井理子がもう一度観たい映画と、その理由。『リトル・ダンサー』

観るたびに新たな発見があったり、人生の変化に気づいたり。名作とは、何度観ても、また観たいと思わせてくれる作品のことかもしれません。映画を愛する翻訳家・村井理子さんが繰り返し観る、人生の伴走者ともいうべき一本とはどんな映画なのでしょうか?

text: Kazuaki Asato

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普遍的な物語と英国の寂れた空気に浸りたいから

当時住んでいた京都の映画館で観ました。日本で人気者だったバレエダンサーのアダム・クーパーが特別出演して話題でしたが、私は全く興味なくて(笑)。

単純にイングランドの風景を映した映画に目がなくて観たんです。実際、この映画の映像は抜群に美しい。煉瓦造りの家が並ぶ坂道、寒々として埃っぽい空気、曇り空のグレーと平原の緑のコントラスト……。

イギリスの寂れた雰囲気が大好きで、学生時代はよく旅行もしていました。英語の訛りと口の悪さも好きですね。あの雰囲気に浸りたくて、双子の息子が小さい時は、自宅のテレビでよく流していました。

私は派手なハリウッド映画よりも、炭鉱町でひたむきに淡々と生きる人たちの葛藤に惹かれがちです。『リトル・ダンサー』は、皮肉と感動のバランスもちょうどいい。粗暴さと皮肉に満ちていながら、才能に恵まれた少年を、どん詰まりの大人たちが応援する親切心も描く。

そんな普遍的な物語をシンプルに描いて人を惹きつける難しさは、翻訳やエッセイの仕事をしていても痛感するんです。しかも本作はわかりやすいのに、何度観ても発見がある。それは手をかけて製作されているから。既に十数回観ていますが、これからも観続けたい数少ない作品です。

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