ロマンティックコメディの可能性を感じられるから
ロマンティックコメディは好きなジャンルではあるものの、恋愛成就というゴールに向かっていくような物語には、昔みたいに乗れなくなっている自分がいたんです。そんな時、これからいろんな形のロマンティックコメディが生まれてくるんだろうなと思わせてくれた作品。
「恋愛はこういうもの」という一つの価値観を押しつけるのではなく、登場人物みんなが「愛とは何か?」を定義しようとしている。王道のプロットで始まりながら、関係性の中で変化が起こって、裏返されていく。
主人公のエリーが、ポールの代筆でアスターにラブレターを書く時、彼女はまだ愛について知らないから、映画の名言を引用します。最初は、エリーもポールも借り物の言葉を使っているんだけど、そうする中で自分の言葉を手に入れていく。
僕自身もそういう体験をしてきましたし、そのプロセスに感動して。何より、語られること、語られてないことを、中国語と英語、手紙、携帯のメッセージ、グラフィティといったいろんなコミュニケーションのレイヤーを使って、ビジュアルとして立ち上げるのがすごくうまいんですよね。
今後、自分がロマンティックコメディを作りたくなった時にも、また観返したくなると思います。