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山を撮り続ける写真家・野川かさねが厳選!この夏行ってみたい山小屋

登山の楽しみのひとつが、山小屋。一泊して朝夕の美しい景色を見るもよし、日帰りで立ち寄っておいしい“山小屋ごはん”を食べるのもいい。10年以上、各地の山小屋を訪れ、写真を撮り続ける野川かさねさんに、初心者でも行きやすい山小屋を聞いてみた。

現在、山の魅力を伝える特設サイト「Mt. BRUTUS」もオープン中!

photo: Kasane Nogawa / text: BRUTUS

鷲が峰ひゅって(霧ヶ峰/長野県)

山を撮り続ける写真家・野川かさねさんが厳選!この夏行ってみたい山小屋
昭和34年に建てられた小屋は外観も内装もシックでクラシカル。すぐ前に湿原が広がる。

「霧ヶ峰高原の八島湿原に隣接する〈鷲が峰ひゅって〉は、湿原散策のベースにぴったりの立地。ゆっくりと湿原を散策したあと山小屋に入ると、そこはクラシックな雰囲気が漂う別世界。古い山岳書の並ぶ居間で読書を楽しんだり、窓から見える森をぼんやりと眺める時間は、何にも変えがたい贅沢。夜の楽しみは、ランプの灯りのもとでいただくコース仕立ての夕食とこだわりのワイン。そして翌日、朝の光とともにいただく黒曜石水で発酵させた天然酵母の焼き立てパンの朝食が、高原での時間をより特別なものにしてくれます。穏やかな湿原が広がる霧ヶ峰は、登山というよりハイキングという感じで、登山経験があまりない方でも、気持ちよく歩けると思います」

山を撮り続ける写真家・野川かさねさんが厳選!この夏行ってみたい山小屋
朝は焼き立てパンが並ぶイングリッシュブレックファスト。夜はフレンチのフルコースと、ゆったりとした食事の時間を楽しめるのも魅力。

龍宮小屋(尾瀬/群馬県)

龍宮小屋
尾瀬ヶ原のちょうど中央あたりに位置し、山小屋の後ろには日本百名山のひとつに数えられる燧ヶ岳の勇姿が。正面には至仏山が見え、なんとも贅沢な景色を味わえる。

尾瀬の群馬側の登山口「鳩待峠」から歩いて2時間ほど。尾瀬ヶ原のちょうど真ん中に位置する「龍宮小屋」は、尾瀬の様々な風景を楽しめる山小屋。日帰りでも楽しめる尾瀬ですが、ぜひこの小屋に宿泊して、一夜を過ごした人しか見られない、美しい尾瀬ヶ原の朝夕の風景を楽しんでほしいです。尾瀬には数多くの山小屋がありますが、山小屋の近くからは至仏山と燧ヶ岳、尾瀬の2大シンボルである名山を両方見られるのは貴重。写真を撮る人にもおすすめです。清掃がゆき届き、いつも訪れても気持ちのいい空間。そのたびに小屋の方たちの実直な仕事ぶりを感じ、その点にも心動かされます。

嘉門次小屋(上高地/長野県)

嘉門次小屋
穂高連峰の麓、ひっそりと佇む小屋には、北アルプス開拓時代の時間が流れる。梓川沿いをのんびり歩ける、初心者でも無理のないコース。

歴史好きにおすすめしたいのは、北アルプスのお膝元・上高地の「嘉門次小屋(かもんじごや)」。上高地バスターミナルから、美しい穂高連峰を見上げつつ、ほとんどアップダウンのない道を歩いて1時間ほど。穂高神社奥宮参道わきにあります。「日本アルプス」を世界に紹介した日本近代登山の父 W.ウェストンの山案内人であった猟師・上條嘉門次が暮らした小屋がそのルーツです。囲炉裏端に座り、嘉門次が生きた時代からここで食べられてきたイワナの塩焼きや岩魚骨酒をいただきながら、昔の山や人へ思い馳せる。山頂を目指す登山ではなく、上高地や日本の登山史という視点から山を感じることのできる貴重な山小屋です。

嘉門次小屋 囲炉裏
小屋には囲炉裏があり、昔ながらのスタイルでイワナの塩焼きを提供する。夜は火を囲みながら、登山者や小屋の主人が山の話に花を咲かせる。

城山茶屋(奥高尾/東京都)

城山茶屋
週末には大勢のハイカーで賑わう城山茶屋。小さな山旅の中に旅情を加えてくれる、愛すべき茶屋。

東京都民の憩いの山、高尾山。その山頂から延びる奥高尾縦走路は、ゆるやかなアップダウンがあり、初心者でも気持ちのいい尾根歩きを楽しめるルート。山頂から1時間ほど歩くと小仏城山に到着。その山頂に城山茶屋があります。ここは宿泊用ではなく休憩用の山小屋で、季節ごとのおいしい山小屋ごはんを楽しめる場所。小屋の前のベンチに荷物をおろして、まずは夏の時期限定の特大かき氷を。歩いて疲れた体をクールダウンした後は、カップ酒とともに手作りのなめこ汁とおでんをいただきます。醤油仕立てのなめこ汁は、高尾山の湧き水を使った澄んだ味。まわりを見渡すと、各々に食事の時間を楽しむ登山客の姿があって、低山ならではののんびりした光景が、またいいのです。

城山茶屋 かき氷
夏限定の名物、ビッグかき氷は、ぜひ。