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卓球で例えるなら“カットマン”。〈トンツカタン〉森本と大久保佳代子が考えた、現代のツッコミ会話術

トリオ〈トンツカタン〉での活動のほか、近年はMCとしての活躍も目覚ましい森本晋太郎。数々のライブやバラエティ番組でその場を円滑に回すツッコミ力に定評がある。そんな森本が自身のノウハウを解説した著書『ツッコミのお作法』を上梓した。そこで、CBCラジオ『真誠presents 大久保佳代子・森本晋太郎のどうぞご自由に』でタッグを組み、息の合ったやりとりを見せる人力舎の先輩・大久保佳代子に、彼のツッコミを評してもらった。

photo: Takuroh Toyama / hair&make: Terue Haruyama / text: Fukusuke Fukuda

“ツッコミガチ勢”のお作法とは?

大久保佳代子

ラジオ番組が始まってまだ1年経ってないですけど、どんなことを言っても拾って何とかしてくれるという信頼感はありますよ。だからいろんなところに呼ばれてるんだなってわかります。

あと、ガツガツしてない。ツッコミで場をさらうんじゃなくて、みんなを立てて生かすようなツッコミをするよね。多分インターナショナルスクール出身だから、品がいいんだよな。貧乏人は入れないですもんね。

森本晋太郎

ちょっと口が悪いなあ(笑)。まあ確かに、学費は高いですけど。

大久保

ほら、今のもそう。「学費は高いですけど」と事実を言うことで、私の「貧乏人」という強い言葉が和らいでフォローになってる。そういうところです。私がラジオで気持ちよく話せてるのも、知らず知らずそうやって助けられてるのかも。

森本

別に意識して訂正してるわけじゃないですけど。「こいつが相手なら全部言い換えてツッコんでくれるだろう」と、制約なくリラックスしてやってもらえたら嬉しいなとは思ってます。最終的にそのボケのくだりが使えるものになるか否かは、ツッコミの腕にかかってる場面もあるので。

大久保

私は前の世代のバラエティ出身だから、キツめに言えば言うほど面白いと思ってたところがあるんです。でも、以前番組でインフルエンサーの方に「どこの馬の骨かわかんねえのに」って言ったら場が変な空気になったことがあって(笑)。情報をアップデートせずに自分の物差しだけでしゃべると、トンチンカンなことを言ってしまうから気をつけなきゃなって。

森本

まったく見たことないと思ってた人でも、YouTubeでは100万人以上登録者がいたりしますからね。

大久保

それに、昔は緊張してうまくしゃべれなかった時に、「何言ってるかわかんないよ、おばさん!」みたいにツッコんでもらうことで助けられたことがいっぱいあったのね。でも、今は容姿をいじって笑いにするとかあり得ないでしょう。

森本

お客さんにも、そういうのがしっかりウケなくなってきてますからね。

大久保

だから、森本君みたいに古い武器を使わずに、その人の個性を生かしてどうツッコむかを考えられる人が、この先は生き残っていくんだろうなと思う。上の世代の人たちも、残ってる人はみんなマイナーチェンジしてるもん。

〈くりぃむしちゅー〉の上田(晋也)さんとかはまさにそうで、最終的にはしゃべった人が絶対に損をしないようにまとめてくれる。昔はツッコミって“Sっ気のある人”というイメージだったけど、今は場を見渡して全体が円滑に進むよう調整してくれる、すごく包容力のある人の仕事ですよね。

森本

卓球で言うとカットマンみたいな。ツッコミって今は、守備に特化したポジションかもしれないですよね。僕もいつも、一歩後ろに引いて、とにかく来た球を返すイメージでやってます。

個人的なツッコミのルールとしても、みんなを救う“最後の砦”になりたいというのがありますね。僕は周りをかき分けてグイグイ行けるようなタイプでもなく、今も雛壇では全然うまくできないですし。

大久保

ああ、『ラヴィット!』とか?

森本

僕が不得意な現場を特定しようとしないでください!

大久保

でもさあ、プライベートでお茶とかご飯に行った時は、意外と愛想に乏しいよね。話題も提供しないし、「次、何飲まれます?」みたいな気遣いもないし。「あれ、本当はコミュニケーション力弱いのかな?」って思う時あるよ。

森本

それ言われると本の宣伝にならなくなっちゃう(笑)。でも、プライベートがそんな感じだからこそ、ツッコミ仕事の時は「行っちゃえ!」と思えるのかも。僕がこれまでいろんな失敗を経て会得したノウハウ本だと思って、読んでほしいです!