Talk

Talk

語る

日本独自の文化、レコードの「帯」に夢中。小さな舞台に詰め込まれた名コピーたちに刮目

歌謡の沼は広く深い。傑作アルバム、デュエットに見る男女の歴史に、レコード帯や前口上など、少し視点を変えれば歌謡曲はもっともっと面白い!構成作家、ライター・チャッピー加藤がレコードの帯から読み解くメッセージ。

text: Chappy Kato

帯、それはレコードの
作り手たちからのメッセージである

日本のレコード業界が生んだ独自の文化が、LP盤(アルバム)の左隅に掛けられた「帯」だ。
「ジャケットが見えないじゃん」と捨ててしまう人も多かったが、私はキープ派だった。

なぜ日本にだけ帯が生まれたのかについては諸説あり、洋盤を売る場合、カタカナ表示があった方がわかりやすい、というのも理由の一つだろう。
加えて、ジャケットとは別なので、自由に売り文句が書き込める利点もある。私が帯を捨てなかったのは、そこに添えられた文章に、送り手側の熱意を感じたからだ。

帯を見ていると、当時の制作スタッフたちが必死で考えたキャッチコピーやダジャレなどもあって、当時の空気感も伝わってくる。帯も立派な作品の一部なのだ。

CDジャケット 帯デザイン

(右から)
RCサクセション『シングル・マン』
RCサクセションの3rdアルバム。名曲「スローバラード」収録。セールスが伸びず廃盤になったが、ファンの運動が実り異例の再発が実現。帯のレコード会社による「お詫び文」もまた異例。1976年。

石野真子『微笑』
彼女の1stアルバムは、「一〇〇万ドルの微笑!」というインフレ気味(!)のコピーがいかにも70年代だ。なんとこの3年後に電撃婚約。エクボが映える微笑を長渕剛が独占するとは。1978年。

斉藤由貴『PANT』
ダジャレ系の帯の中には、ちと高尚なものも。「濃縮感源(濃縮還元)」は彼女がカルピスのCMに出ていたのに引っ掛けたのだろうが、10倍に薄めて聴く方法がいまだにわからない。1988年。

小室等、吉田拓郎、井上陽水、泉谷しげる『クリスマス』
フォーライフを設立した4人によるクリスマス盤。「30万枚限定」も10万枚ほどの売れ行きに。ジャケットは文字なし銀一色のため、帯に全情報を凝縮させている。1976年。

三田寛子『16カラットの瞳』
帯に本人直筆のメッセージが入った1stアルバム。しかも達筆!デビュー曲「駈けてきた処女」も収録。作詞:阿木燿子、作曲:井上陽水で初々しさ満点、もっと知られるべき名曲。1982年。

KUWATA BAND『NIPPON NO ROCK BAND』
サザンの活動休止中に桑田佳祐が期間限定で結成。このタイトルを掲げながら、収録曲の歌詞ははすべて英語。帯の「たいした、もんだい作!」は看板に偽りナシ。1986年。