スリマンガラム(経堂)
目が覚めるような香りと辛味!
インド南部注目エリアの郷土料理。
今や日本のカレーの一大潮流となった南インド料理だが、〈スリマンガラム〉は、南東部チェティナード地方料理に特化したシーンの最精鋭。厨房に立つのは同地方の出身で、清澄白河〈ナンディニ〉等の人気店を率いてきたテーヴァン・マハリンガムさんだ。
味作りの最大の特徴は、リッチな食材使いにある。ホールスパイス、フレッシュハーブを惜しげもなく使ったカレーは、南インド特有の「さらりと優しい味わい」とは一線を画すパンチの強さ。ミールスに並ぶサンバルやラッサム、カーラコロンブなども酸味、辛味、甘味の輪郭がくっきり。砕いたアッパラムやヨーグルトなどとともにライスに混ぜ合わせることで、味のみならず見た目、テクスチャー含め混然となった渦が出現し、五感が覚醒する思いだ。
チェティナード地方ではチェティアールという商人が世界で商いをし、富とともに各地の食材やスパイスを土地に根づかせたといわれる。インド随一ともいわれる食文化の一端を、ミールスで味わうべし。
三燈舎(神保町)
ケララ出身のシェフが作る
優しく洗練された味わい。
店主は、インド料理好きが高じてインテリア業界から飲食の道へ転身した堀文子さん。シェフはケララ州出身のトーマスさん。共に南インド料理専門店の先駆〈ダバ インディア〉で働いた仲間。カレーの町、神保町にありそうでなかった南インド料理店が2019年にオープンして以来話題を呼んでいる。
南インドの中でもトーマスさんの故郷、ケララ州の味にフォーカスし、ミールスとティファンと呼ばれる軽食をメニューに揃える。ミールスは、サンバル、ラッサムにチキンカレーと魚のカレー、野菜料理が付く。「南インドの中でも、油脂は控えめで、酸味や野菜の甘味を感じるのがケララ州の料理」と、堀さん。食べて納得。穏やかで軽快なのに、余韻が長く続く味だ。
ビーンズオンビーンズ(新日本橋)
北と南のフュージョン!
マトンも楽しめる贅沢ミールス。
“南インド食堂”でありながら、北部のカレーも作るネパール出身のチェトリ・ラトナさん。2009年に来日し〈マハラジャ〉や〈アーンドラダイニング〉で長年働き、2019年に自身の店をオープンした。
レストラン時代の経験を生かした野菜たっぷりの南インドミールスをベースに、インド育ちの母親が作ってくれたという思い出の北部のマトンカレーなどをラインナップ。ガラムマサラの効いた濃厚な北の味と、タマリンドやマスタードシードを使った辛さも香ばしい南の味の両方が味わえる。
野菜作りにも精を出し、トマトやタマネギは千葉の畑で育てたもの。ライスはビリヤニで、おやつ代わりのメデュワダもセットに。インドを丸ごと詰め込んだ贅沢な一皿だ。