創作カレー MANOS(三軒茶屋)
大阪スパイスカレーのDNAが放つ、
印、日、中、タイの合体プレート。
カレーは、チキンを定番に、キーマ縛り、チャレンジ枠の3種。が、チキンにしても、タマネギを炒めるところから、ではなく、鶏肉と大根を、ブリ大根のごとく和風の鶏だしで煮て、グレービーと合わせるという、我が道を行くもの。そしてこの日のキーマは、ガパオライスを食べていて閃いたという、アジと豚挽き肉の酸味のあるナンプラー風味。
チャレンジ枠は、火鍋のスープから発想を得たという、キクラゲ入りの白湯ベースの八角風味だ。この枠にはチリコンカン的なカレーが登場することも。まるで異種格闘技戦のごとき皿だが、定番のチキンが和テイストの食べやすい味なので、混然一体となってもちゃんとおいしい!
その凄腕ぶり、経歴を聞けば、納得である。店主は、大阪と東京の〈旧ヤム邸〉で、ルール無用、完全オリジナルのカレーを365日考案し続ける、というハードな課題で鍛え上げられた遠藤僚さん。東京に店を構えてもうすぐ3年。大阪スパイスカレーのDNAは、すっかり根を下ろしている。
FISH(新宿)
ベースは名店の味を守りつつも、
トッピングで“混ぜる”を実現。
六本木で30年間愛され、2017年に惜しまれつつ閉店した〈FISH〉が、新宿で復活を遂げていた。看板メニューは、選べる定番カレー(チキン、大辛チキン、フィッシュから1種)+キーマの合いがけ。伝統の味はしっかり守りつつも、大きく変わったことが2つある。
昔は2種だった合いがけに、豆カレーがデフォルトとして追加され、3種の合いがけになったこと。これは新宿の店が“混ぜる”スタイルのカレー屋さんとして生まれ変わったことを意味する。お皿にはアチャールやパッパルも加わった。2つ目はトッピングが17種類(!)もあること。バターコーンやホウレン草、揚げナス、チーズといったカレーにお馴染みのものから、スパイシーなサバフライやマイルドヨーグルトディップなど本格インド風まで盛りだくさん。
六本木時代にシェフが作ったベースのカレーを守りつつ、今の時代に合わせたスタイルを追求している。昔からの常連も入り混じって、自由に楽しむカレーとなった。
ハルダモンカレー(代々木上原)
混ぜて生まれる“甘酸辛苦渋”を
追求するアーティストのカレー。
エビだしとイカスミのカレーにはディルとタイム、カルダモン風味のチキンカレーにはカスリメティとオレガノ、ショウガ風味のポークには醤油漬けのショウガ。トッピングのセンスが抜群で、1種を混ぜるだけでも味と香りが転調する。「混ぜた時、“甘酸辛苦渋”全部が口の中に感じられるように作っています」と、日本酒の味を表現する5文字でカレーを語るのは店主のハルさん。
アーティストとして絵を描きながら、ホルモン、アメリカ料理、海鮮居酒屋と、多彩な飲食店で経験を積んできた。カレーは経歴を物語る、だしの旨味が生きた仕上がり。3種が混ざって生まれる旨味の海と、そこから立ち上るスパイスやハーブの香りで、“甘酸辛苦渋”を。