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東京の混ぜるカレー3選〈MANOS〉〈FISH〉〈ハルダモンカレー〉

大阪のスパイスカレーに南インドの定食ミールス……。カレー界のトレンドを紐解いて辿り着いたのは、“混ぜて食べる”というキーワードだ。そこで“混ぜる”シーンを盛り上げる、気鋭の店を大公開。店主やシェフの混ぜ方解説付き!

photo: Naoki Tani, Yasufumi Manda, Jun Nakagawa / text: Yuko Saito, Kei Sasaki, Neo Iida

創作カレー MANOS(三軒茶屋)

大阪スパイスカレーのDNAが放つ、
印、日、中、タイの合体プレート。

カレーは、チキンを定番に、キーマ縛り、チャレンジ枠の3種。が、チキンにしても、タマネギを炒めるところから、ではなく、鶏肉と大根を、ブリ大根のごとく和風の鶏だしで煮て、グレービーと合わせるという、我が道を行くもの。そしてこの日のキーマは、ガパオライスを食べていて閃いたという、アジと豚挽き肉の酸味のあるナンプラー風味。

チャレンジ枠は、火鍋のスープから発想を得たという、キクラゲ入りの白湯ベースの八角風味だ。この枠にはチリコンカン的なカレーが登場することも。まるで異種格闘技戦のごとき皿だが、定番のチキンが和テイストの食べやすい味なので、混然一体となってもちゃんとおいしい!

東京〈MANOS〉3種がけ
3種がけ 1,400円/1:赤キャベツのマリネ/2:枝豆のポリヤル(枝豆のココナッツ炒め)/3:豚バラ豆乳白湯カレー(週替わりのチャレンジカレーから。大阪スパイスカレーで近頃よく見かける白湯スープがベースの、八角(アニス)入り中華風カレー。)/4:ナスとバジルのアジアンポークキーマ(月替わりのキーマカレーから。アジと豚挽き肉が混在するカレーは、ナンプラーとレモンが入ったタイ風で、フレッシュバジルがトッピング。)/5:MANOSチキンカレー(大根が入った定番のチキンカレーには、これまた和食材、白髪ネギのトッピング。)/6:ダルカレー(ちょっと見えにくいが、ここに南インドでお馴染みの、いちばん優しい豆カレーが潜む。これも定番。)/7:温泉卵(トッピングで+100円)/8:パパド(ヒヨコ豆の粉で作った薄焼きせんべい。)

その凄腕ぶり、経歴を聞けば、納得である。店主は、大阪と東京の〈旧ヤム邸〉で、ルール無用、完全オリジナルのカレーを365日考案し続ける、というハードな課題で鍛え上げられた遠藤僚さん。東京に店を構えてもうすぐ3年。大阪スパイスカレーのDNAは、すっかり根を下ろしている。

FISH(新宿)

ベースは名店の味を守りつつも、
トッピングで“混ぜる”を実現。

六本木で30年間愛され、2017年に惜しまれつつ閉店した〈FISH〉が、新宿で復活を遂げていた。看板メニューは、選べる定番カレー(チキン、大辛チキン、フィッシュから1種)+キーマの合いがけ。伝統の味はしっかり守りつつも、大きく変わったことが2つある。

昔は2種だった合いがけに、豆カレーがデフォルトとして追加され、3種の合いがけになったこと。これは新宿の店が“混ぜる”スタイルのカレー屋さんとして生まれ変わったことを意味する。お皿にはアチャールやパッパルも加わった。2つ目はトッピングが17種類(!)もあること。バターコーンやホウレン草、揚げナス、チーズといったカレーにお馴染みのものから、スパイシーなサバフライやマイルドヨーグルトディップなど本格インド風まで盛りだくさん。

六本木時代にシェフが作ったベースのカレーを守りつつ、今の時代に合わせたスタイルを追求している。昔からの常連も入り混じって、自由に楽しむカレーとなった。

東京〈FISH〉チキンカレー&キーマ&MIX豆カレー
チキンカレー&キーマ&MIX豆カレー 1,200円/1:キーマカレー(鶏もも挽き肉を使い、ふわっとした食感に仕上げたキーマ。)/2:スパイシーマッシュポテト(ジャガイモのスパイス炒め・サブジをマッシュポテトにアレンジ。)/3:MIX豆カレー(甘味の強い豆カレーは味つけの濃いキーマ、チキンと一緒に。)/4:干し大根のアチャール(酸味をよく吸った大根。細く切ってあるので食感のアクセントに。)/5:パクチー(パクチーも細切りにすることで、混ぜた時にカレーと馴染みやすくなる。)/6:チキンカレー(カレーの鍋に大ぶりのチキンを入れて煮込むことで、肉の旨味がルーに追加される。)/7:タマネギのアチャール(アチャールは六本木時代は別皿で提供していたが、ワンプレートになることで仲間入り。)/8:パッパル(パッパルは豆の生地でできたおせんべい。)

ハルダモンカレー(代々木上原)

混ぜて生まれる“甘酸辛苦渋”を
追求するアーティストのカレー。

エビだしとイカスミのカレーにはディルとタイム、カルダモン風味のチキンカレーにはカスリメティとオレガノ、ショウガ風味のポークには醤油漬けのショウガ。トッピングのセンスが抜群で、1種を混ぜるだけでも味と香りが転調する。「混ぜた時、“甘酸辛苦渋”全部が口の中に感じられるように作っています」と、日本酒の味を表現する5文字でカレーを語るのは店主のハルさん。

アーティストとして絵を描きながら、ホルモン、アメリカ料理、海鮮居酒屋と、多彩な飲食店で経験を積んできた。カレーは経歴を物語る、だしの旨味が生きた仕上がり。3種が混ざって生まれる旨味の海と、そこから立ち上るスパイスやハーブの香りで、“甘酸辛苦渋”を。

東京〈ハルダモンカレー〉全がけ
全がけ 1,800円/1:ショウガの醤油漬け(2のカレーにもトッピングにもショウガを使った、ジンジャー2段仕込みカレー。)/2:ジンジャーポークカレー/3:タイム、ディル/4:エビだしのイカスミシーフードカレー(エビの頭でとっただしを使用。魚だしのカレーは、前職の居酒屋から魚のアラを調達して作っている。)/5:ダル(豆のカレー。)/6:カルダモンチキンカレー(店名は、店主の名前とカルダモンの造語で、自筆の店のキャラクターもカルダモンがモチーフ。そして、チキンカレーにも一番多く入れているスパイス。)