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多様化する公園。芝生に集う都市のリビング〈南池袋公園〉

手ぶらで出かけてもピクニック気分、いつでもおいしいサンドイッチとコーヒーがあって、リビングみたいな居心地の公園があればいいな、と思っていたら、ありました。ほかにも、泊まれちゃったり、不足しているこども園ができて、日常生活を支える場になったり。公園は今、多様化しています。その先端を行く事例を追いました。

photo: Tetsuya Ito / text: Tami Okano

南池袋公園(東京都/豊島区)

日本屈指の巨大ターミナルステーション、池袋駅から徒歩5分。駅前から続くグリーン大通りを抜け、公園に足を踏み入れると、そこだけ、ぽっかり、空が広がっている。空の下には、青々とした芝生の広場。傍らには大きなカフェもある。

〈南池袋公園〉が今の姿にリニューアルしたのは、2年ほど前(2018年当時)。以前は治安が悪く、近隣住民ですら寄り付かない場所だったという。「そんなマイナスからの出発だったからこそ、思いきった改革ができたのかもしれない」とリニューアルの総合プロデュースを務めたランドスケープデザイナー、平賀達也さんは話す。

目指したのは、都市のリビング。来園者が、思い思いにくつろげる場所で、芝生とカフェがその中心だ。実現のキーワードは、官民連携の公園“運営”。所有者である豊島区の“管理”だけに頼らず、地元の町会や商店会などが公園運営に携われる組織作りと体制作りが行われた。組織名はその名も〈南池袋公園をよくする会〉。

公園で行われるイベントの是非をジャッジできるほか、今、彼らが最も力を入れているのが、公園を象徴するこの芝生をいかに維持し、開放するか。夏芝と冬芝の切り替え期間や養生期間があることなど、芝生育成の理解を深めるためのイベントも、会の主催で行っている。

座席数110席、2階建ての広々としたカフェも公園施設としては画期的な規模だ。建物は区が建て、地元の人気ビストロ店がテナントとして入っている。

「区の教育施設や備蓄倉庫も兼ねており、カフェの運営者は災害時の帰宅困難者に炊き出し支援を行うなど、区と連携した取り組みを行うことが条件になっています。このような“公設民営”は公園の可能性を広げる切り札の一つですが、その民営側に、この場所を長い目で見守り、共に育てるという意識があるかがポイントです」と平賀さん。売り上げの一部は「地域還元費」として公園の維持管理に活かされる。

カフェのメニューはどれも公園内に持ち出し可能。ふかふかの芝生で食べるおいしさはまた格別で、芝生を手入れする人々には来園者から自然と感謝の声がかかる。そのおおらかな雰囲気と豊かな環境が、公園を「みんなのリビング」にしている。

南池袋公園
約8,000m2の公園の半分を占める芝生広場。ここが超過密都市のド真ん中とは思えないほどの開放感で、平日も多くの来園者で賑わう。