「名車探偵」映画・ドラマに出てくるクルマの話:アウトビアンキ・A112 アバルト

車好きライター、辛島いづみによる名車案内の第4回。前回の「スバル インプレッサWRX 2006」も読む。

Text&Illustration: Izumi Karashima

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ワタシもペンギン村の
住人になりたかった。

大人になったら千兵衛さんのアウトビアンキに乗るのが夢だった。

横山剣さんの名著『僕の好きな車』に倣い、「私の好きな車」ベスト5を挙げるなら、ホンダ・シティ・ターボ、ルノー・サンク・ターボ、プジョー205ラリー、初代フィアット・パンダ、初代VWゴルフ、そして、アウトビアンキ・A112アバルト……おっと、ベスト6になってしまった。いやいや、ホントはもっとある。言いだしたらキリがない。

ワタシはハッチバックのクルマにばかり乗っている、と以前書いたが、それはおそらく、いや、絶対に、鳥山明のせい。失礼、呼び捨てにしてしまった。鳥山明先生。スチャダラパーのBose氏も言っていたが、アラフィフのクルマ好きにとって『Dr.スランプ』の影響は相当デカい。

先生はもともとクルマ好き。中でもデフォルメに適したハッチバック車がお好きなようで、自身の愛車でもあったシティは山吹みどり先生の、アウトビアンキは則巻千兵衛さんのクルマとして登場(千兵衛さんはシトロエンのタイプHというマニアックなバンにも乗っていた)。おかげで、「クルマはコロッとしたボディでキビキビ走るものがいい」というイメージを子供だったワタシは植え付けられたんだと思う。

『Dr.スランプ』14巻収録の「わしと自動車」という先生のエッセイによれば、「わしがクルマとかバイクとかメカメカしいのがやたらスキなのはたぶんオヤジのエイキョー」だそうで、「オヤジはその昔オートバイのレーサーなどというやたらかっこいいことをやっており(中略)やめたあと自動車修理屋さんをはじめた」そうだ。

が、先生自身は極度の方向音痴で「ドライブというやつがあんまりスキではない」。先生にとって、クルマは大きなプラモデルだったのかもしれない。

ペンギン村の住人になりたかったワタシは、サンクやパンダには乗ったが、いちばん乗りたかったはずのアウトビアンキは縁がないまま。20代の頃、中古車屋を駆けずり回り、群馬で1台発見したものの、あまりにもボロボロだったので怯んでしまい見送ったのだ。

それから二十数年。ふとネットで検索してみたら10台ヒット。どっこいまだ生き残っている。ヤバい、また欲しくなってきた。

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