「名車探偵」映画・ドラマに出てくるクルマの話:スバル インプレッサWRX 2006

車好きライター、辛島いづみによる名車案内。前回の「ミニ MKⅢ」も読む。

Text&Illustration: Izumi Karashima

サイドブレーキを引いて
スピンターンを決めたい!

インプレッサは1992年に登場。94年に「ワークスインプレッサ」で世界ラリー選手権にデビューし、マニュファクチャラーズとドライバーズのタイトルをそれぞれ3回獲得。スバルの黄金期を築いた。

サイドブレーキを引いて
スピンターンを決めたい!

もう一つ人生があるのなら、ワタシは“ゲッタウェイドライバー”になりたい。バカかと思われるだろうが、結構マジな夢だ。そんなにクルマが好きならレーサーになればいいじゃないと言われるだろうが、いやいや、そんなマッチや三原じゅん子みたいなことじゃない(譬えが古い)。

ワタシは「公道」を「上手」に「運転」したいのだ。『頭文字D』の藤原拓海のごとく水をこぼさず峠を越えたい。

銀行の対面に停車した真っ赤なインプレッサWRX。3人組が車を降り、顔を隠しながら銀行へと向かう。運転席に一人残ったドライバーは、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの曲をiPodでプレー。口パクをしながらノリノリになるうちに、銀行でコトを済ませた3人組が荷物を抱え再びWRXに滑り込む。警報音が鳴り響く中、ドライバーはバックスピンターンで発進。華麗なドライビングテクニックで追いすがる警察をまいていく。

エドガー・ライトの『ベイビー・ドライバー』(17年)。未見の方は、YouTubeにアップされている「冒頭6分カーチェイス」と題された動画をまず観てほしい。コレです。こんなふうにサイドブレーキをガッと引いて美しくスピンターンを決めたいのだ。ワタシもベイビーになりたい!

主人公は「ベイビー」という名の「逃がし屋」。幼い頃に交通事故で両親を亡くし、そのトラウマで耳鳴りがやまず、絶えずイヤホンで音楽を聴いている寡黙な青年だ。しかしハンドルを握ると天才ドライバーに豹変。音楽を聴くことで集中力と反射神経を研ぎ澄まして疾走、誰も追いつけなくなってしまう。

CGは一切なし。アトランタの公道でカーチェイスを撮影、ベイビーを演じたアンセル・エルゴートも、撮影前にスピンターンやドリフトをマスターして挑んでいる。エドガー・ライトいわく、最初はカローラで撮ろうとしたけれど、スタントチームのアドバイスでWRXに決めたという。そして、何台か用意した中にはドリフトしやすいよう後輪駆動に改造したりエンジンをチューンアップした個体も。

撮影後、エルゴートはWRXを気に入って購入、撮影車はオークションに出品、69,100ドル(約750万円)で落札された。