「名車探偵」映画・ドラマに出てくるクルマの話:ミニ MKⅢ

車好きライター、辛島いづみによる名車案内の第2回。前回の「プジョー205GTI 1.6」も読む。

Text&Illustration: Izumi Karashima

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ミスター・ビーンは
運転がめちゃうまいのだ。

ミスター・ビーンことコメディアンのローワン・アトキンソンは筋金入りのクルマ好き。マクラーレンF1、アストンマーティンV8ザガート、フォード・ファルコン・スプリント、BMW328、ランチアデルタHFインテグラーレ、ホンダNSXなどなどさまざまなタイプをコレクションする、いわゆる「エンスー」。

小学生の頃から実家の農場でモーリス・マイナーを乗り回していたそうで、大型トラックの免許も持っている。クルマ雑誌でエッセイや試乗記を執筆し、カーレースにも出場。ゆえに『Mr.ビーン』にもクルマは頻繁に登場する。

「見た目はおっさん」だけど心は「永遠の9歳児」のミスター・ビーン。愛車はご存じ、イギリスの名車「ミニ」。テレビシリーズの2話目までは、オレンジ色のモーリス・ミニ(MKⅡ)だが、第3話からは黄色のボディに、ボンネットはつや消しの黒のブリティッシュ・レイランドのミニ(MKⅢ)が相棒に。

とにかくビーンは運転がうまい。クルマとクルマの間に数センチの隙間で駐車するスケッチではピタッと一発で決めるし、寝坊したビーンが寝間着のままミニに飛び乗り歯医者へ向かうスケッチでは、運転しながらシャツやズボンを穿き替え、歯磨きまでする。

極めつきは、大量のセール品をミニに詰め込むスケッチ。運転席に座れなくなりルーフに乗せたソファに座って運転する。ハンドルにヒモをくくりつけ、ギアは2速固定、アクセルとブレーキはモップ棒でつついて操作。こりゃさすがにスタントだろうと思っていたが、数年前に行われたミニのイベントでアトキンソンは実演走行してみせた。え、マジだったの⁉ 

ところで、ビーンにしょっちゅうバカにされるクルマをご存じだろうか。ビーンのミニにぶつけられたりひっくり返されたりする水色の三輪自動車。1930年代から72年までイギリスで作られていたリライアント・リーガルである。

そういえば、アトキンソンは97年に約9,500万円でマクラーレンを購入したが、2015年に約15億円(!)で売却している。どっかのセレブがロクに乗りもせず高級車を売買しているが、アトキンソンは2回クラッシュさせ、修理に1億数千万円かけるほど愛し抜いたのだった。

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