ダットサンは挑戦精神が宿るクルマ
寝る前にアニメ『美味しんぼ』を1話観るのが最近の日課だ。漫画は『スピリッツ』連載当時よく読んでいたし(主人公の山岡士郎と栗田ゆう子が結婚したあたりまでは追っていた)、アニメもテレビ放送されていた時分にだいたい観た。中村由真が歌う主題歌「Dang Dang 気になる」はカラオケに行くと必ず歌うワタシの十八番。
繰り返し観たり読んだりしてしまうのは、昭和末期から平成初期の頃の雰囲気に(バブル崩壊前後のフワフワした世の中に)ノスタルジーを感じてしまうというのもあるが、令和では炎上案件でしかないパワハラ&セクハラ満載の「会社コメディ」が、志村けんの「バカ殿」のように滑稽に見えるからかもしれない。
『美味しんぼ』は、東西新聞記者の山岡と栗田の「究極のメニュー」作りを軸として展開するグルメ漫画。食べ物に関するウンチクを知ることができたり、山岡の父である美食家・海原雄山がブレーンを務める帝都新聞の「至高のメニュー」との対決が見ものなのだが、116話あたり(単行本だと21巻)から、山岡をゲットしようとするお嬢様社員の二木まり子、栗田に惹かれるカメラマンの近城勇が登場、同僚以上恋人未満の山岡と栗田のじれったい関係が動き始め、俄然面白くなる。
そして、クルマ好きとして見逃せなかったのが、118話「挑戦精神」(単行本は21巻第5話)。「食い物の写真は撮りたくない」という近城を、栗田が説き伏せようとする場面。近城は自身の愛車1959年製のダットサン・ブルーバードに栗田を乗せ、「人気カメラマンだからポルシェとかフェラーリに乗ってると思ってました」と驚く栗田に、「このクルマが仕事を引き受けないことの答えだ」とドヤ顔をする。
つまりダットサンは日本の自動車工業が初めて本格的に乗用車を造り始めた頃のクルマであり、そこには挑戦精神が宿っているが、「いまのグルメブームには挑戦精神がない」と、わかるようでわからない屁理屈を言うのだ。おそらく(当時の)高級車ブームを快く思ってなかったゆえの譬(たと)えだろうが、ポルシェやフェラーリにも挑戦精神はバリバリ宿ってますよ、近城さん!
ちなみに、海原雄山の愛車はロールス・ロイス・ファントムⅥである。