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現代写真家、カンディーダ・ヘーファーの棚。「撮影の旅の準備に欠かせない、知識と憧憬が詰まった本棚」

“秩序の美学”を探求する作品を撮り続ける写真家、カンディーダ・へーファーの本棚。

photo: Jiha JEON, Dalra NAM(portrait) / interview: Yumiko Urae / text: Kazumi Yamamoto

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撮影の旅の準備に欠かせない、
知識と憧憬が詰まった本棚

美術館、劇場、レストラン、ホテル、動物園、図書館と、多くの人が集まる公共スペースを、誰もいない状態で撮影し続ける、ドイツの現代写真を代表するカンディーダ・ヘーファー。彼女の本棚は自身の作風を象徴するかのように整然と配列されている。

「自分の本棚に関しては年代やアルファベット別とかストイックな秩序を持って並べるのが好きなわけではありません。それでも身の回りのものが美しく配置されている状態は好きです。だから被写体として図書館とか資料室などにも惹かれるのだと思います」とカンディーダ。その傾向は現代写真家の巨匠、ベルントとヒラ・ベッヒャーから写真を学ぶ前からあったそうだ。

アーティスト・カンディーダ・ヘーファーの自宅の本棚
ショールームには自身のカタログ、現代アーティストの作品集や外国に関する書籍が整然と並ぶ。グレーの金庫は、建物の壁自体に1920年代に設置されていたお気に入りの存在だそう。

両親が60年代に建てた近代建築スタイルの建物を増築した自宅に、法学の大学教授を務めた夫と2人で暮らす。クラシックモダンなインテリアもどこか静謐な空気感を漂わせている。大きな窓から自然光の入る居間では、季節ごとに光の変化を感じながら、また暗い時には照明スタンドを立てて、本を読む時間を作るそうだ。

「国を問わず、私は一般的な秩序のあり方に惹かれます。その一つが図書館です。それは、本の並び順、本棚自体、その配列などですね。装丁の素材や形、色に惹かれるものがあれば、本の背表紙だけを撮影することもあります。パンデミックの影響で、残念ながら、ここ数年、魅力を感じている国に行くことができません。アジアには古い図書館も新しい図書館も、まだまだ発見すべきものがたくさんあると思っています」

そんな好奇心を掻き立てられるという外国に関する本も多く並ぶ。世界中の文化を知り、心惹かれた美しい建築物を撮影するための“旅の準備”の棚といえよう。

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