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鬼才トム・サックスの頭脳をまるで覗き込むかのよう。スタジオの棚を一挙公開

突き抜けた発想で世界を刺激し続ける現代アーティスト、トム・サックス。彼のスタジオは工具や各種材料、制作中を含む作品群などおびただしい数のモノたちが埋め尽くし、訪れる者を圧倒する。だが一見カオスのようでいて、実は秩序が保たれているのはなぜだろう?

photo: Blaine Davis / interview: David G. Imber / text: Mika Yoshida / edit: Kazumi Yamamoto

平面も柱も、「棚」へと進化する。
トム・サックスの“ノーリング”美学

「スタジオの空間すべてがノーリングされている」とトムは言う。「KNOLLING」とは、彼が提唱する独自の収納法だ。その手法を説明しよう。まずは身の回りのモノをすべて実際に使っているかどうかで分類し、使っていないモノはしまい込む。使うモノは「仲間同士」でグループ分けをする。そしてグループごとに全アイテムを平行・垂直もしくは90度の角度にカッチリと並べれば、完了!

整理法であると同時に、トムの創作理念にも通じる概念だ。シンプルながら合理的なこの手順を隅々にまで徹底することで、スタジオの能率は向上する。また大勢のスタッフが機械工具や危険物も扱う現場だけに、高い識別性=安全管理というメリットの重みは計り知れない。

3フロアにわたる巨大な空間にひしめく棚、そして棚。仲間同士でそれぞれまとまったアイテム群に充てられた、専用の「居場所」が棚と言っても過言じゃない。奥行きは作らず「面」で展開することで、視認性が高まる。トムやベテランスタッフはもちろん、新入りスタッフでも必要なモノのありかがすぐわかるのだ。

面白いことに、トム独特のこだわり抜く美意識までもが「ノーリング」によって浮かび上がってくる。そう、棚の一つ一つがまるで彼の生み出す立体作品のように見えるのも、実は決して偶然ではないのである。

現代アーティスト・トム・サックスのスタジオのリペアルーム
電子系統のリペアルーム。かつてはトムの寝室だった場所。ノーリングされたモノたちによって、頭上の空間や棚板の「厚み」さえも棚と化す。トムの真骨頂といえるスペース。