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「愛って、誰かを想像したり思い出したりすることから」。写真家・石田真澄が選ぶ、愛の映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』

愛の映画を語る時、その人が理想とする愛の形が見えてくる。写真家・石田真澄さんに聞いた、愛と映画の話。

text: Ryota Mukai

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愛って、誰かを想像したり思い出したりすることから

愛って、難しいしわからないけど、もしかしたら目の前にいない誰かを思うことかもしれないと思って、この映画が浮かびました。主人公でもヒロインでもなく、2人を見守る立ち位置にいる白城さんというキャラクターが特に印象的だったんです。彼らがいないところで、一人で考えたり、心配したり、時には行動したり、ずっと彼らのことを思っている。映画自体も、観ていると身近な人をふと思い出す作品です。ヒロインの麦戸ちゃんが社会で起きた問題と自分の関わりに悩んでしまうシーンでは似たところのある友人を思ったり、原作者の大前粟生さんと監督の金子由里奈さんを私に薦めてくれた友達を思い出して、手紙を書いたりもしました。

優しい映画とまとめられることも多いけれど、それだけではないんです。登場人物たちは互いに思い合っていて、自分で考えた言葉をしっかり投げかけるし、逆にあえて声をかけないこともある。多様な愛情表現が描かれていて、七森くんと麦戸ちゃんは対話を続けながら他者と話すことの加害性について共有していたり、七森くんと白城さんは優しさの中にも重みと強さが感じられるような関係性だったり。最近は恋愛至上主義的ではない映画も少なくないけれど、監督の金子さんの描き方からは、類型化しがたい繊細な関係性に理解があることが伝わってくる。自分の弱いところも、大丈夫じゃないことも肯定してくれる映画なんです。

京都の大学生・七森は、“男らしさ”“女らしさ”のノリが苦手。そして周りと同じように恋愛をしたいと願っていた。彼が所属する「ぬいぐるみサークル」を舞台に、ぬいぐるみや麦戸、白城をはじめとする部員たちとの交流を描く。監督:金子由里奈/出演:細田佳央太、駒井蓮、新谷ゆづみほか。

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