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編集者・菅付雅信の写真論。その集大成が刊行『写真が終わる前に』

「写真の未来は明るいかと言われたら、別に僕は明るくないと思っています。でも、終わるかどうか聞かれれば、終わらないと答えます」と真っすぐな眼差しで話すのは、編集者の菅付雅信。写真専門誌『コマーシャル・フォト』の連載「流行写真通信」約6年分の原稿を中心にまとめた書籍『写真が終わる前に』を刊行するにあたり、タイトルへ込めた思いを語ってくれた。

photo: Shu Yamamoto / text: Yoshiko Kurata

写真を読むという快楽について

「たしかに今、商業的な視覚表現においてはYouTubeやTikTokをはじめ受け手が”見る”ことに徹する動画が主流になっています。実際に撮影現場でもスチールより動画撮影の方を優先して段取りが組まれるほどです。でも、写真には”読む”快楽があると信じています。最小限の情報量だからこそ自分のペースでイメージを反復でき、解釈の余地を味わえると思うんですよね」


本書には総勢116名の写真関係者のコメントを収録。彼らを取り巻く様々なトピックも登場する。「振り返るとここ数年のロンドンとニューヨークの写真エージェンシーの影響力はすさまじかったですね。一時期は所属するトップの写真家たちの撮影料が数億円になるほどに頂点を迎え、続くように若手もすぐにスターとして成功していきました。でも、本書で取材したジェイミー・ホークスワースしかり、写真家たちは次第に商業的な仕事にだけ取り組むことに疲弊し始め、また今はエージェンシーに頼らず自立したハブを持ち始めています」

そうした怒濤の時代の第一線で活躍するプレーヤーに話を聞くため、国内外へと足を運び続けた菅付が考える、次なるファッション写真とは一体どのようなものか。「いかなる時代も表現は、常にリアリティとファンタジーの間を振り子のように揺れながら進化していきます。

先述のジェイミーやハーリー・ウィアーはちょうどその中間のようなアナログでオーガニックな感覚を持っていて。その後、登場してきたジョニー・デュフォーはポストプロダクションで遊ぶファンタジー寄りの表現です。今後は、そうしたフィルムの温かさと技術によるマジックを組み合わせた新たな自然体が生まれるんじゃないでしょうか」

菅付雅信『写真が終わる前に』