山下丸郎
〈magnif〉閉店のニュースにはびっくりしました。
中武康法
今の店は12月半ばに閉めますが、近くで移転先を探しています。順調にいけば1月に再開したいと思っているので、今後ともよろしくお願いします。
山下
次も神保町ということで安心しました。〈stacks bookstore〉は移転して1年半ですが、僕個人はライター仕事で20代から通っていて神保町には愛着があります。
中武
僕は独立する直前まで神保町の古書店で働いていて、大学もこのエリアなので、そこから数えると30年。長い年月この街に通い続けている僕個人の感覚から言うと、年々賑やかになっているなぁと感じます。
山下
とにかく人が増えましたよね。
中武
〈magnif〉で言えば、2018~19年くらいを境に、若者や海外からのお客さんが増えてきました。それまでの常連の方々もいらっしゃいますが、観光客がふらっと入ってくる感じがとても多い。
山下
うちの店は、目がけて来てくれる方が多い印象ですね。SNSや雑誌の記事を見て知る方が多いみたいです。
中武
観光客だけでなく、本に携わる方々も世界中から来てくれますよね。ここ10年くらい、毎年神保町に来ていろんな店を回って面白い本を探している。
山下
ファッション界隈からも、神保町に行きたい、古書店に連れていってほしいとよくリクエストされます。日本の古本と古着に興味を持っている人が本当に多い。
中武
古い雑誌もよく売れます。日本のクリエイターたちが残したもののかっこよさが、改めて発見されているんでしょうね。『Time Out』誌の「世界で最もクールな街」ランキングで第1位に選ばれたのも、そんなところからなんじゃないかな。
山下
神保町という街の在り方が好きだし、ここで商売している身としても、いろんな人の目に魅力的に映って、いい意味で街が盛り上がるのは嬉しいですね。
中武
建物や店が入れ替わっても古書店に喫茶店やコーヒーショップがあって、ちょっと歩けば楽器店やスポーツ用品店が集結しているような、文化的密度は変わらない。
山下
新しいお店が増えた一方、中古ビデオなどを扱う店は減りました。でも街が大きく変化したという感触は僕もないです。
中武
核の部分はまったく変わってないんですよね。神保町が変化して注目を集めるようになったというよりも、変わらないまま街の面白さが発見されたんじゃないかなぁ。自分の中ではずっと熱い街です。

今、神保町で見つけたい本
本の街・神保町の20年
2005
古書店ポータルサイト「BOOK TOWNじんぼう」が立ち上がる。
2007
建築家・菊地宏が設計を手がけた〈南洋堂書店〉がリニューアルオープン。
2009
古書店〈magnif〉がオープン。“雑誌専門”という特異性で多数のメディアから注目を集める。
2012
1890年から続く老舗書店〈東京堂書店〉が大規模リニューアル。
2014
古書店〈@ワンダー〉が手がける〈ブックカフェ二十世紀〉がオープン。
2015
〈ディスクユニオン神保町店〉がリニューアルオープン(今年5月閉店に)。
2018
レンタルCD&DVDショップ〈ジャニス本店〉が閉店。
2021
コンセプトホテル〈BOOK HOTEL 神保町〉がオープン。
2022
〈三省堂書店神保町本店〉が旧店舗での営業を終了。小川町仮店舗に(2026年3月に再開予定)。
2023
ブックカフェ・バー〈BOOK SHOP 無用之用〉が新装オープン。
2024
〈stacks bookstore〉が渋谷から神保町へ移転。
2025
『Time Out』誌の「世界で最もクールな街」第1位に神保町が選出される。

