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広がる恋の形を8つの作品から紐解く〜セクシュアリティ編〜

LGBTQに象徴されるように個々のセクシュアリティが多様化する今、あらゆる関係が「恋」の一つとして受け入れられつつあります。実践には弱いけれど、恋が描かれたカルチャーには目がない小誌編集部員AとBのコンビが、様々な関係に光を当てる作品を求めて東奔西走。すると“真の恋”が見えてきました。

Photo: Kaori Ouchi / Text: Emi Fukushima / Cooperation: Ao Omae, Naoto Mori

人対人の交わりに、
恋の初期衝動が詰まっていた

A

今年話題になった韓国ドラマ『梨泰院クラス』って観た?

B

観た観た!ハマったな〜。

A

主人公の仲間に心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人がいたけど、最近は映画やドラマで異性間以外の恋愛が普通に描かれるようになったよね。

B

漫画や文芸でも多いよ。例えば、漫画『あちらこちらぼくら』。この前取材をした作家の大前粟生さんに薦められて読んだんだけど、タイプは真逆の男子高校生2人が、お互い自分にはない素養に惹かれて距離を縮める。恋の始まりが爽やかに描かれていて、キュンとしたな〜。

A

恋愛の指向を問わず、多くの人が共感できそうだね!

B

普遍性で言えば、歌集『はーはー姫が彼女の王子たちに出逢うまで』もそう。男性同士の恋がテーマの短歌だけど、歌っているのは些細な恋の風景なので、ありふれた恋愛の話にも置き換えて読める。

A

それならグラフィックノベル『スピン』も良かったよ。レズビアンを自認する10代女子の葛藤が、周囲との関係に悩んだり、好きな人に好きって言えなかったりする思春期特有の悩みとともに語られていて。

B

いいね!ほかにも、小説『ディスタント』が描く恋をした時のかすかな視線の動きや、小説『最初の悪い男』や漫画『やがて君になる』が描く恋をする過程に触れると、セクシュアリティは多様化しても、相手の気持ちを推し量ったり、些細な仕草や表情を愛おしんだりする恋の本質は変わらないと感じるね。

A

それと、今の恋の広がりって単純な同性愛に限らないよね。例えば、ドラマ版で志尊淳の女装が話題だった『女子的生活』の主人公は、見た目は女性で体は男性、恋愛対象は女性のトランスジェンダーだった。

B

私も原作を読んで、初めてそんな人がいるって知った。主人公が超ポジティブなのがいいよね。

A

ネイルをキラキラに仕上げてミニスカートで出社。合コンでは女子をお持ち帰りしちゃうもんね(笑)。

B

外野の攻撃に屈せず、ありのままの自分を楽しむ姿勢は潔い!

A

映像なら『性別が、ない!インターセックス漫画家のクィアな日々』も良かった。インターセックスは、男性と女性の中間の性のことだけど、映画評論家の森直人さんも「性への認識を柔らかく広げてくれる一本」と太鼓判を押している。