今、わざわざ行きたい。書評家・渡辺祐真が選ぶ「理想の図書館。」

本棚を眺める楽しみを語るうえで、図書館は欠かせない。地域密着の図書館、専門性の高い図書館、コーヒー片手に読書できる図書館、古くからの姿を残す図書館……。本好きに聞く、今、わざわざ行きたい図書館。

本記事は、BRUTUS「理想の本棚。」(2025年12月15日発売)から特別公開中。詳しくはこちら

edit: Keiko Kamijo

図書館司書の力で、好奇心をぐっと深める

小説から古典まで縦横無尽に渡り歩き、読み方のコツを的確に示し、ラジオやYouTubeで読書や創作の楽しみを広げる書評家「スケザネ」こと、渡辺祐真さん。今でこそ読書量はハンパでないが、本格的に読書を始めたのは大学に入ってから。その後、図書館のスゴさに目覚め衝撃を受けたのだという。

「中高時代はゲームとテニスしかしていなかったのですが、大学4年間では書店や古書店を回って貪(むさぼ)るように読んでいました。本の参考文献を辿っていくと、品切れや絶版という現象に遭遇する。仕方ないなと、大学の図書館に行ってみたら驚愕。未読本の海は深く広がっていました。書店というのは同時代を扱う市場の原理で動いていますが、図書館は全く違う歴史、時間のアーカイブです。そうした知の地層にズブッと潜り込める、こんな場所があったんだと衝撃を受けたわけです」

渡辺さんが通った中から3つの様々なタイプの図書館を紹介してもらった。

「上野の〈国際子ども図書館〉は、他館でも古本屋でも見つからなかった少年誌のゲーム特集を目当てに行きました。空間は最高ですし、未来を担う子供のために本への入口を用意している試みも素晴らしい。〈日比谷図書文化館〉は立地も最高ですし、本と文化を街に開く図書館の理想形。

街に開く図書館の理想形。〈稲城市立中央図書館〉は地元の図書館を見直すきっかけになりました。漠然とした調べ物はAIより司書に相談することが多い。エキスパートですからね」

国立国会図書館国際子ども図書館

歴史的建築で本に出会う未来を拓(ひら)く子供の図書館

1906年に建てられた帝国図書館の建物を保存・再利用し、2000年に開館した国内唯一の国立の児童書専門図書館。設計を手がけたのは安藤忠雄。古くから伝わる昔話から、国内外の児童文学、青少年向けの児童書まで約70万点を所蔵する。1階には、円形の書棚に小学生までの子供の本が約1万冊配架。2階には「児童書ギャラリー」と「調べものの部屋」がある。

日比谷図書文化館

歴史を見つめ続けてきた館で、文化そのものに触れる

1908年〈東京市立日比谷図書館〉として開館。第二次世界大戦時に空襲により焼失し、57年に都立日比谷図書館として落成。その後、図書館とミュージアム機能を融合させた施設に機能改修し千代田区に移管後、2011年に千代田区立日比谷図書文化館として開館。図書館機能と、多彩な展示をするミュージアム、学びの講座(日比谷カレッジ)が一体となっている。

稲城市立中央図書館

利用案内の新たな試みとして、図書館内をRPGで散策⁉

大きく広がる空間に、約23万冊規模の開架図書と約100の閲覧席がある。グループ学習室やボランティア室など市民活動にも利用可能。シーズンごとにイベントを開催している。自らがゲームキャラになって図書館を散策できるRPG『おいでよ稲城市立図書館』を公開。『ゲーミング図書館アワード2023』において優秀賞(デジタルゲーム部門)を受賞した。

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