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お取り寄せ四天王に聞いた、地球最後の日に食べたい一品。〜前編〜

人生最高のお買いもの、フードのことはこの人たちに聞くしかない。どうせならドラマティックに、設定は「地球最後の日に食べるなら」。すべてを悟った諦観の人、野望も欲望も消えない人、淡々とした人。エンディングには人間性が透けて見える。さて、あなたはどうかな。後編はこちら

本記事も掲載されている、BRUTUS「人生最高のお買いもの。」は、好評発売中です。

photo: Tetsuya Ito / text: Michiko P. Watanabe, Ai Sakamoto(data) / styling: chizu, Asako Katayama / cooking: Namie Omi, Yuki Ishiguro

最後に何を食べるかは人生を振り返ることだった

♪ピンポンパンポン〜。地球上のあらゆる皆様、お取り寄せやテイクアウトを楽しんでますか。ワレワレハ〜BRUTUS編集部内にひっそりと生息する、地球とお取り寄せ特集をこよなく愛する者でございます。2005年から四天王とともに続けてまいりましたこの特集、BRUTUS1000号という輝かしき好機にじっとしておられず、今回もまた、やらかしてしまいました。

テーマは、はい〜っ、「地球最後の日に食べたい一品」でございます。いや、ちょっと待て。よくある、人生最後に食べたいもの特集を見ると、渋いものを挙げる方が多いではないか。それだとジミーなページになりそうだ。でも、前日食べたいものならば、思いっきりゴージャスなものが出てくるんじゃなかろうか。

食べすぎたって平気だし、体のことも気にしなくていい。ならば、前日の夜と当日のおやつも併せて伺おうってことになった。もちろん、誰もが手に入れられるものに限る。取り寄せだけでなく、テイクアウトも可。

こうして、秋元康さん、松任谷正隆さん、酒井順子さん、佐藤可士和さんという、お馴染み四天王にお集まりいただいた。審査なし、べらぼうな試食もなし。よって、バックヤードのお祭り騒ぎもなし。でも、やっぱ、楽しいお取り寄せ。知られざる4人の素顔も覗けるかも。

右から松任谷正隆、酒井順子、佐藤可士和
お取り寄せ特集でお馴染みの膨大な試食がない分、ゆったり雑談しながら、ゆとりの表情。

意外にも、穏やかな最後に続く計算し尽くされた流れ

———それでは、お一人ずつ、前日から当日までの流れをプレゼンしていただき、残りの3人が試食、コメントをするというスタイルでまいりましょう。では、秋元さんから。

秋元さんの選択

食べることで人生の業を洗い流し、清い体になる

左から〈赤坂 塩野〉のお赤飯、〈甘泉堂〉の栗むし羊羹、〈三輪山本〉の白龍
左から
前夜の晩餐:〈赤坂 塩野〉のお赤飯
最後のおやつ:〈甘泉堂〉の栗むし羊羹
最後の一皿:〈三輪山本〉の白龍

松任谷正隆

(マネージャーさんに)ねぇ、××(糖・脂肪の吸収を抑えるダイエットサプリ)ある?

秋元康

あれ、松任谷さん、何か気にしてるの?

松任谷

ちょっと血糖値高めだったから、9月から節制してて、体重も7㎏落ちたの。

佐藤可士和

僕はお酒やめたんです。

秋元

えーっ。

佐藤

そしたら、半年ぐらいで、いろんな数値がガンと落ちて、お医者さんが驚くほどでした。体重も3㎏すっと落ちた。それで今、断酒がクリエイター仲間で流行ってるんです。村上隆さんもやめた。

秋元

お酒を飲まないなんて、人生の楽しみが半減していると思うよ。

佐藤

あれ、秋元さんがやめたって言うから僕もやめたんですよ。

秋元

そんなこと、一度も言った覚えがない。

佐藤

あれ、勘違いかなぁ。

———あのぉ、そろそろ……。

秋元

前日に食べたいのが〈赤坂 塩野〉のお赤飯。お赤飯は「おめでたい」ものですけど、ちょっと皮肉を込めて。

松任谷

けじめがつきますね。人生、ありがとうございましたって感じ。

秋元

子供の頃はお赤飯が好きじゃなかったんです。大人になって、良さがわかるようになった。ぬたやコハダも(笑)。〈塩野〉はビジュアルもきれいですよね。それから、おやつは京都〈甘泉堂〉の栗むし羊羹(ようかん)。竹皮で包んで蒸してある。風流です。

酒井順子

子供の頃、栗蒸し羊羹の魅力がわからなかった。大人になって、わかるようになりました。この栗蒸し、むっちりとおいしい。

松任谷

人生の儚(はかな)さを感じます。

佐藤

甘さがちょうどいいですよね。赤飯に羊羹って、並びが濃いですね。

秋元

いろいろ食べ尽くして、これに辿り着いた。

松任谷

やさしい味。

佐藤

人生最後の、侘(わ)びた感じがいいですね。

秋元

栗羊羹だと濃厚すぎるんです。元気すぎて最後の日にふさわしくない(笑)。栗蒸しだからいいんです。儚いでしょ。そして最後の最後は、〈三輪山本〉の極細そうめんの白龍を。

佐藤

このパッケージ、僕がデザインしたんです。秋元さんが選んでくださって、めちゃくちゃ嬉しい。

秋元

え、そうだったんですか。うちは、以前から取り寄せています。

松任谷

その手があったか、と膝を打ちました。そうめんは思いつかなかったかなぁ。これ、買います。

———料理チームの隊長も大好きで、お取り寄せしているそうなんです。レシピにはゆで時間60秒と書いてあるけど50秒がいいと。

秋元

そうなんです。アルデンテでゆで上げるのがいい。

酒井

これ、贈答にもいいと思う。

秋元

昔はお中元といえばそうめんだったけど、一巡したんじゃないかな。

松任谷

秋元さん、薬味はどれがおすすめですか。

秋元

どれでもお好みで。たっぷり入れてください。

松任谷

おー、するする入る。

佐藤

最後に体がきれいになる。

松任谷

日本人に生まれてよかったという思いになりますね。

秋元

これまでの業を洗い流して、きれいな体になって最後を迎えるという流れ(笑)。

松任谷

やっぱり、人が出ますね、この企画。

煩悩だらけと気づき、頭を抱え、しばし反省

松任谷さんの選択

生き延びようというチョイス。煩悩だらけが露呈

左から、〈國よし〉の特選鰻重、〈中国飯店 富麗華〉のオリジナル月餅(杏あずき)、〈Qué BONITA〉のスパイスグラノーラ、〈田野畑山地酪農牛乳〉のやまちヨーグルト
左から
前夜の晩餐:〈國よし〉の特選鰻重
最後のおやつ:〈中国飯店 富麗華〉のオリジナル月餅(杏あずき)
最後の一皿:〈Qué BONITA〉のスパイスグラノーラ、〈田野畑山地酪農牛乳〉のやまちヨーグルト

松任谷

僕は前日は大磯〈國よし〉の特選鰻重を食べたい。

秋元

この店、並ぶんですか。

松任谷

いえいえ、予約すればいつでも入れます。実は僕、40年ぐらい通ってる歯医者さんがありまして、その人に教えてもらって、一番通ったウナギ屋さんなんです。思い出がたくさん詰まったうな重です。やっぱり、最後の日となると、思い出方向に思考が行きますよね。

酒井

この包みでもらったら嬉しい。

佐藤

たれが甘すぎず、おいしい。

酒井

キリッとしてますよね。

松任谷

おやつは〈富麗華〉の月餅。杏あずきがおすすめです。

秋元

これ、知らなかった。皮が薄くて、しっとり。月餅は普通、こんなにあんこっぽくないですよね。おいしい。上海や北京でいただく中秋の名月の頃の月餅は、卵何個入りとかで、しっかり硬いですよね。

松任谷

日本人の女性点心師が、日本人の口に合う月餅を作ろうと開発したオリジナルだそうです。

酒井

ゴマ油感が少ない。

佐藤

和菓子っぽい感じです。

酒井

大きさも程よい。

松任谷

4種あるんですけど、クリームチーズもおいしい。あー、秋元さんは爽やかに人生終えた感じなのに、僕のチョイスは煩悩だらけ。未練たらたらで情けない。

佐藤

松任谷さんはアンズ好きですか。僕も大好き。

秋元

男はアンズ好きが多いのかも。

松任谷

で、最後の最後は〈Qué BONITA(ケ・ボニータ)〉のグラノーラと〈田野畑山地酪農牛乳〉のやまちヨーグルトです。

秋元

おいしい、おいしい。

松任谷

僕、考えたんです。地球最後の日にどうやって地球が終わるのか。もしかしたら、巨大隕石が降ってきて逃げないといけないかもしれない。ご馳走食べちゃうと走れないから、軽くしたいと思って。

秋元&酒井&佐藤

アハハハ。

松任谷

もう、煩悩の塊ですね。

秋元

走っても逃げ切れない。

酒井

意外。逃げるんですね。

松任谷

このグラノーラ、スパイスコーディネーターの方が作ってるんですけど、カートが開くと瞬殺でなくなるんです。その方が実店舗を出されて。3種類ありますけど、おすすめはオレンジピールが入ってるの。ヨーグルトもいろいろ試して、今回ベストを発見しました。

佐藤

オレンジ、いいですね。

酒井

私はカカオが好きでした。ヨーグルトのやさしい酸味とよく馴染みます。