最後に何を食べるかは人生を振り返ることだった
♪ピンポンパンポン〜。地球上のあらゆる皆様、お取り寄せやテイクアウトを楽しんでますか。ワレワレハ〜BRUTUS編集部内にひっそりと生息する、地球とお取り寄せ特集をこよなく愛する者でございます。2005年から四天王とともに続けてまいりましたこの特集、BRUTUS1000号という輝かしき好機にじっとしておられず、今回もまた、やらかしてしまいました。
テーマは、はい〜っ、「地球最後の日に食べたい一品」でございます。いや、ちょっと待て。よくある、人生最後に食べたいもの特集を見ると、渋いものを挙げる方が多いではないか。それだとジミーなページになりそうだ。でも、前日食べたいものならば、思いっきりゴージャスなものが出てくるんじゃなかろうか。
食べすぎたって平気だし、体のことも気にしなくていい。ならば、前日の夜と当日のおやつも併せて伺おうってことになった。もちろん、誰もが手に入れられるものに限る。取り寄せだけでなく、テイクアウトも可。
こうして、秋元康さん、松任谷正隆さん、酒井順子さん、佐藤可士和さんという、お馴染み四天王にお集まりいただいた。審査なし、べらぼうな試食もなし。よって、バックヤードのお祭り騒ぎもなし。でも、やっぱ、楽しいお取り寄せ。知られざる4人の素顔も覗けるかも。
意外にも、穏やかな最後に続く計算し尽くされた流れ
———それでは、お一人ずつ、前日から当日までの流れをプレゼンしていただき、残りの3人が試食、コメントをするというスタイルでまいりましょう。では、秋元さんから。
秋元さんの選択
食べることで人生の業を洗い流し、清い体になる
松任谷正隆
(マネージャーさんに)ねぇ、××(糖・脂肪の吸収を抑えるダイエットサプリ)ある?
秋元康
あれ、松任谷さん、何か気にしてるの?
松任谷
ちょっと血糖値高めだったから、9月から節制してて、体重も7㎏落ちたの。
佐藤可士和
僕はお酒やめたんです。
秋元
えーっ。
佐藤
そしたら、半年ぐらいで、いろんな数値がガンと落ちて、お医者さんが驚くほどでした。体重も3㎏すっと落ちた。それで今、断酒がクリエイター仲間で流行ってるんです。村上隆さんもやめた。
秋元
お酒を飲まないなんて、人生の楽しみが半減していると思うよ。
佐藤
あれ、秋元さんがやめたって言うから僕もやめたんですよ。
秋元
そんなこと、一度も言った覚えがない。
佐藤
あれ、勘違いかなぁ。
———あのぉ、そろそろ……。
秋元
前日に食べたいのが〈赤坂 塩野〉のお赤飯。お赤飯は「おめでたい」ものですけど、ちょっと皮肉を込めて。
松任谷
けじめがつきますね。人生、ありがとうございましたって感じ。
秋元
子供の頃はお赤飯が好きじゃなかったんです。大人になって、良さがわかるようになった。ぬたやコハダも(笑)。〈塩野〉はビジュアルもきれいですよね。それから、おやつは京都〈甘泉堂〉の栗むし羊羹(ようかん)。竹皮で包んで蒸してある。風流です。
酒井順子
子供の頃、栗蒸し羊羹の魅力がわからなかった。大人になって、わかるようになりました。この栗蒸し、むっちりとおいしい。
松任谷
人生の儚(はかな)さを感じます。
佐藤
甘さがちょうどいいですよね。赤飯に羊羹って、並びが濃いですね。
秋元
いろいろ食べ尽くして、これに辿り着いた。
松任谷
やさしい味。
佐藤
人生最後の、侘(わ)びた感じがいいですね。
秋元
栗羊羹だと濃厚すぎるんです。元気すぎて最後の日にふさわしくない(笑)。栗蒸しだからいいんです。儚いでしょ。そして最後の最後は、〈三輪山本〉の極細そうめんの白龍を。
佐藤
このパッケージ、僕がデザインしたんです。秋元さんが選んでくださって、めちゃくちゃ嬉しい。
秋元
え、そうだったんですか。うちは、以前から取り寄せています。
松任谷
その手があったか、と膝を打ちました。そうめんは思いつかなかったかなぁ。これ、買います。
———料理チームの隊長も大好きで、お取り寄せしているそうなんです。レシピにはゆで時間60秒と書いてあるけど50秒がいいと。
秋元
そうなんです。アルデンテでゆで上げるのがいい。
酒井
これ、贈答にもいいと思う。
秋元
昔はお中元といえばそうめんだったけど、一巡したんじゃないかな。
松任谷
秋元さん、薬味はどれがおすすめですか。
秋元
どれでもお好みで。たっぷり入れてください。
松任谷
おー、するする入る。
佐藤
最後に体がきれいになる。
松任谷
日本人に生まれてよかったという思いになりますね。
秋元
これまでの業を洗い流して、きれいな体になって最後を迎えるという流れ(笑)。
松任谷
やっぱり、人が出ますね、この企画。
煩悩だらけと気づき、頭を抱え、しばし反省
松任谷さんの選択
生き延びようというチョイス。煩悩だらけが露呈
松任谷
僕は前日は大磯〈國よし〉の特選鰻重を食べたい。
秋元
この店、並ぶんですか。
松任谷
いえいえ、予約すればいつでも入れます。実は僕、40年ぐらい通ってる歯医者さんがありまして、その人に教えてもらって、一番通ったウナギ屋さんなんです。思い出がたくさん詰まったうな重です。やっぱり、最後の日となると、思い出方向に思考が行きますよね。
酒井
この包みでもらったら嬉しい。
佐藤
たれが甘すぎず、おいしい。
酒井
キリッとしてますよね。
松任谷
おやつは〈富麗華〉の月餅。杏あずきがおすすめです。
秋元
これ、知らなかった。皮が薄くて、しっとり。月餅は普通、こんなにあんこっぽくないですよね。おいしい。上海や北京でいただく中秋の名月の頃の月餅は、卵何個入りとかで、しっかり硬いですよね。
松任谷
日本人の女性点心師が、日本人の口に合う月餅を作ろうと開発したオリジナルだそうです。
酒井
ゴマ油感が少ない。
佐藤
和菓子っぽい感じです。
酒井
大きさも程よい。
松任谷
4種あるんですけど、クリームチーズもおいしい。あー、秋元さんは爽やかに人生終えた感じなのに、僕のチョイスは煩悩だらけ。未練たらたらで情けない。
佐藤
松任谷さんはアンズ好きですか。僕も大好き。
秋元
男はアンズ好きが多いのかも。
松任谷
で、最後の最後は〈Qué BONITA(ケ・ボニータ)〉のグラノーラと〈田野畑山地酪農牛乳〉のやまちヨーグルトです。
秋元
おいしい、おいしい。
松任谷
僕、考えたんです。地球最後の日にどうやって地球が終わるのか。もしかしたら、巨大隕石が降ってきて逃げないといけないかもしれない。ご馳走食べちゃうと走れないから、軽くしたいと思って。
秋元&酒井&佐藤
アハハハ。
松任谷
もう、煩悩の塊ですね。
秋元
走っても逃げ切れない。
酒井
意外。逃げるんですね。
松任谷
このグラノーラ、スパイスコーディネーターの方が作ってるんですけど、カートが開くと瞬殺でなくなるんです。その方が実店舗を出されて。3種類ありますけど、おすすめはオレンジピールが入ってるの。ヨーグルトもいろいろ試して、今回ベストを発見しました。
佐藤
オレンジ、いいですね。
酒井
私はカカオが好きでした。ヨーグルトのやさしい酸味とよく馴染みます。