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ラランド・ニシダの愛すべき純文学:芥川龍之介『魔術』

ラランド・ニシダがおすすめの純文学を紹介していく連載。前回の「児玉雨子『##NAME##』」を読む

edit & text: Emi Fukushima

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芥川龍之介『魔術』

芥川龍之介著の短編作『蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ 他十七篇』
芥川龍之介著の短編作。『蜘蛛の糸・杜子春・トロッコ 他十七篇』に収録。岩波文庫/836円。

かたや金欲、かたや駄菓子欲

有名どころは読んだことがあれど、意外にもきちんと通ってこなかった芥川作品。最近読んだのが「魔術」です。

主人公の「私」はある晩、ミスラという印度人を訪ねます。魔術の大家でもある彼の素晴らしい術を目の当たりにした「私」は“自分にもその秘技は使えるか”と問い、教えを乞う。そこから物語は展開します。

芥川の名作では、美しい文章から繰り出される童話のような壮大な人生訓が印象的です。今作も例に漏れず教訓じみていますが、最終的に「私」が金への欲に翻弄されるという卑近さが新鮮でした。

そしてオチも最高。ミスラは“魔術は欲のある人間には使えない”と前置きをしますが、後半で彼はある魔術めいたものを使い、「私」の欲深さを暴こうとする。その姑息なやり方は絶対無欲なやつの所業じゃないなと(笑)。痛快です。

今作で「私」はお金の誘惑に負けますが、僕が常々誘惑に勝てないのが、ガブリチュウというソフトキャンディです。なぜか中学生の頃から好きで、今ではその稀少さゆえに、見つけるたびに1本30円のこれを数千円分購入。

そして買ったその日のうちに食べ切るのが流儀です。ちなみに冬の寒い日は特に硬くなるんですが、欲にかまけて買った瞬間にかぶりつき、歯が抜ける災難にも見舞われました。以来それを教訓に、一度ポケットに入れて人肌になるまで温めることを心がけています。

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