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ラランド・ニシダの愛すべき純文学:児玉雨子『##NAME##』

ラランド・ニシダがおすすめの純文学を紹介していく連載。前回の「村田沙耶香『コンビニ人間』」を読む

edit & text: Emi Fukushima

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児玉雨子『##NAME##』

『##NAME##』書影
児玉雨子著。ジュニアアイドルとして活動していた主人公の光と闇を描く。河出書房新社/1,760円。

表舞台に出ることは、光か、闇か

先日発表された芥川賞候補に選ばれた話題作です。物語は、主人公の雪那が、ジュニアアイドルとして活動していた2008年前後の小・中学生時代と、事務所を退所し大学生になり就職活動に励む2015年以降の、2つの時代が交互に描かれ展開していきます。

中でも一番好きなのは、中学生の雪那と、同じ事務所で少し売れっ子の美砂乃ちゃんが、レッスン帰りの公園で喧嘩をするシーン。流れでカフェで飲み物を買って公園へ行くところから、些細なことが美砂乃ちゃんの逆鱗に触れ、最終的には彼女が雪那に対して日頃溜め込んでいた「あだ名で呼んでくれない」という根源的なフラストレーションをあらわにするまでに至る。その一連の流れが何もかもリアルで、グッときました。

僕もどちらかというと無神経なタイプで、日々誰かの怒りを蓄積させているからか、突然ブチギレられることがまあまああるので、余計に引き込まれてしまったのかもしれません。

本作では、アイドルをやめた後も自分の名前や姿が世の中にデジタルタトゥとして残ることへの葛藤も大きく描かれていますが、僕も一応名前を出して仕事をしている以上は他人事ではありません。ドッキリにかけられみっともない姿をさらしたり、日頃のだらしなさや性格の悪さを露呈させられたりするラランドのYouTubeが、いつか自分の首を絞めないことを祈ります。

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