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ラランド・ニシダの愛すべき純文学:太宰治『葉』

ラランド・ニシダがおすすめの純文学を紹介していく連載。前回の「ラランド・ニシダの愛すべき純文学:牧野信一『ゼーロン』」を読む。

edit&text: Emi Fukushima

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太宰治『葉』

太宰治『葉』
太宰治著。エッセイや短編小説、詩などを繋ぎ合わせた短編作。『晩年』に収録。新潮文庫/572円。

厨二心に効く、処世術のパンチライン

「撰(えら)ばれてあることの/恍惚と不安と/二つわれにあり」という冒頭が有名な今作は、敬愛する太宰治作品の中でもとりわけ卑怯さを感じます。というのも明確なストーリーはなく、短編小説やエッセイ、詩、さらに唐突に芸人の一言ネタのようなものまで(!)、文章の断片が書き連ねてあるめちゃくちゃな作品なんです。それでいてパンチラインの連発と、誰にも真似できない文章のうまさでねじ伏せて面白く仕上げてくるところはずるいなと。

特に好きなのは、一見目の前の生活の話をしているようでいてそこに太宰の死生観が見え隠れするところ。“私は、自殺を処世術みたいな打算的なものとして考えていた”との一節は、いかにも太宰らしく厨二心をくすぐる表現です。

ちなみに僕の処世術は、先輩の性質に合わせて自分のアプローチを変えること。芸人界ではかなり下っ端の僕にとって、先輩とうまくやるのはとにかく大事。とはいえ一口に先輩といっても、敬ってくれる後輩を好む人もいれば、少し舐めた感じの後輩を好む人もいます。それを見極めるのは簡単。ブランドモノを身に着けている先輩と同期の輪の中で舐められている先輩は尊敬した方がいいし、逆に、同期から敬われている人には、舐めた感じが効く。じわじわわかってきました。これは社会全般で使えるテクニックだと思うので、ぜひ実践してみてください。

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