この数年で、まだ明るい時間から飲み始める心地よさを知った人も多いに違いない。そのニーズに応えるように京都でも14時や15時から営業する店も増えて、すっかり珍しくなくなってきた。スイーツ、鉄板焼き、プラントベースと気分次第で選べるバリエーションも魅力。
三者三様の料理と酒で、昼下がりからゆるっと過ごす
叡電に乗って足を運びたい一乗寺に登場した〈コイモ ワイン アンド カフェ〉は15時からの営業で、ナチュラルワインと気の利いたアテで出迎えてくれる。店主の高橋順子さんはパティシエとしてタイで10年ほどを過ごし、帰国後にナチュラルワインに開眼。天然酵母パンのベーカリーで働いた後に好きなものだけを揃えた店を開いたというわけだ。
ナチュラルワインはグラスで気取らず飲めるものを中心にその時々で。フードはソムタムなど現地仕込みのタイ料理をアレンジしたものから自家製の天然酵母パン、スイーツまで。空間を飾るのは高橋さんの姉で写真家の高橋ヨーコさんの写真。
店主の醸し出す気取らない雰囲気と相まって、初めてでも、もう何度も通っているような気持ちになる。早い時間には西側の窓から差し込む光も心地よく、ゆるゆると。休日を満喫したい一軒。
店に入れば、飲食業の誰かに出会う。10席全部が同業者のことも少なくない。そんな飲食関係者がことさら愛する店が河原町二条にある〈とよこや〉だ。カウンターに備えた鉄板でちゃちゃっと料理を作りつつ、ワンオペで切り盛りする店主は“とよこ”さんではなく、米田奈央さん。
「伏見区で祖母が鉄板焼きの店を営んでいるんです。保育園の頃から帰ったら店で過ごして、手伝いも。自分の店を開くなら鉄板はマストだと。とよこは祖母の名前です」と、にこにこと教えてくれた。
煮物などもある料理はおばあちゃん仕込み。赤ウインナーや焼きそば、人気のだし巻きは鉄板で手際よく焼き上げる。合間には常連の話に相槌を打ち、時には乾杯も。14時からの営業でラストオーダーは20時。幾分早いような気もするけれど、自分も町に出かけたいからと米田さん。誰かが言った、京都の居酒屋銭湯説という言葉に納得の、心地のよさがある。
京都大学のある吉田エリアで15時から店を開ける〈タルジス〉。店主の木山武則さんは肉料理の名店〈ル・キャトーズィエム〉で料理のキャリアをスタートさせながら、コロナ禍でプラントベースに開眼。プラントベースの料理とナチュラルワインの店を構えたユニークな経歴の持ち主だ。とはいえ修業先で学んだ料理とナチュラルワインの相性のよさは大切に受け継ぐ。
京都近郊で育てられた無農薬や減農薬の力強い野菜をメインに使い、カシューナッツミルクでコクを出したグラタン、原木シイタケで旨味を加えた麻婆豆腐など、シンプルながらメリハリのついた料理を作り上げている。
その味わいたるや、「ここってプラントベースやったん?と、5回目くらいに聞いた方がいました」というエピソードからも推して知るべし。