本やデザインで社会に発信する
——どんな経緯でグラフィックデザインを専門にされたのでしょうか?
ドンヒョク
幼い頃から一人で何かを作ったり絵を描いたりするのが好きでした。両親は、涸(か)れない泉のようにスケッチブックを与えてくれたのですが、その紙面を満たしていく遊びが好きでした。小中高時代はずっと日本の漫画やアニメーション、アメリカの映画やMV等をよく観ていて、自然と美術大学を選んだ感じです。
ヘオク
私も絵が好きで、芸術高校に進学し、彫刻や絵画もやりつつデザインも専攻していたのですが、デザインの授業が面白かった。今、思い返すと、自分から何かを作るよりも、友達から頼まれた方がやる気が出たのでデザインの道を選んだのかなと。また、高校時代はデザイン本を集めていて、本を作る人になりたいと思っていました。
——影響を受けたデザイナーは?
ドンヒョク
美術大学入学後は課題だけで精いっぱいでした。でも、2年生の時にハングル文字・フォント・デザインのサークルに入ったのが転換点となりました。先輩方からも強く影響を受け、この時から真剣にデザインについて探究し始めました。イギリスのグラフィックデザイナー、ピーター・サヴィルの作品集も好きで、いつか音楽の仕事をしたいと思っていました。
ヘオク
『designdb』という雑誌があって、すごくデザインが好きで集めていました。その雑誌をデザインしたのが同じ大学のイ・ギョンス先輩だったことを知り、その瞬間に好きなものと勉強が一気につながりました。
——デザインのインスピレーション源は何ですか?
ドンヒョク
本当に多くの芸術文化から影響を受けていますが、特に大きなものはというと全国にある大小の書店が挙げられます。直接的な体験ももちろん大事ですが、本を通じた間接的な体験も非常に重要だと考えます。例えば〈더북소사이어티(ザ・ブック・ソサエティ)〉は、2000年代後半、私たちがまだ学部生の時から出入りしていて、そこで本を通じて多くのアーティストや作品と出会いました。あとは、多くの先輩デザイナー、友人たちからも多大な影響を受けています。
——最近手がけられたお仕事は?
ドンヒョク
数年前にソウルを代表する文化機関である世宗文化会館のCIのリニューアルを手がけました。ソウルの中心地にある由緒正しい場所のロゴを手がけられたのは感無量です。あとは、アートフェアの『フリーズソウル』のメインビジュアルも担当しています。これは、デザイン作業というよりアーティストへのコミッション依頼のように進められたので、また格別の意味を感じました。
——デザインをしていて楽しいのはどんな時でしょうか?
ドンヒョク
いつもは各自で作業をしているのですが、途中段階で作業を見て、驚いたり、驚かされたりした時。
ヘオク
クライアントの案件も好きではありますが、消耗する仕事でもあります。2020年頃から自分たち発信のプロジェクトが増えてきて、今ではそれが新しい仕事につながっている。それが面白いなと思います。
——今はどんなプロジェクトが進行中ですか?
ヘオク
화원(ファウォン)という出版プロジェクトを立ち上げて、自ら発信者となり出版活動をするほか、光化門の近くにスペースを準備中で、展示やトーク、ワークショップ等を予定しています。デザインの範囲がどんどん広がっていますが、常にデザイン的思考で挑戦できればと。

今の韓国を定点観測するためのスペース、書店、ブックフェア
Space

独立系出版社メディアバスのインプリントとして立ち上がったShin Shinの出版プロジェクト。近々ソウル光化門の近くにスペースをオープンする予定。
住所:ソウル特別市鍾路区西門安路69番501号|地図
Instagram:@hwawon_mediabus
Book

出版社メディアバスが営む書店兼プロジェクトスペース。「名実共に韓国を代表するアートブックショップ。ここで多くの出会いがありました」(ドンヒョク)。
住所:ソウル特別市鍾路区紫霞門路19キル25 B1|地図
Instagram:@tbs_book_society
Book Fair

2024年から始まった群山で開催されるブックフェア。「各地で似たようなブックフェアが多数開催されていることに対する批評的な態度で企画されたそう。私たちは菊地信義さんの本を制作して参加します」(ヘオク)。©hyojin Lim
Instagram:@gsbf.kr