日常餘百(イルサンヨベック)
和洋中、何にでも合う日常使いの白磁はここで
「日常」と店名にあるように、毎日使いたい器が並ぶ。でも、すべてに作家の名前が立っていて、飾っても美しい、完成度の高いものばかりだ。器店でもあり、個展も開くギャラリーでもある。店主はアメリカでの生活を経て帰国したハン・シニョンさんとシンジョンさん姉妹。
「10年くらい前まで韓国でも生活陶芸は少なかったのですが、今は若手作家も増えて百花繚乱です」。スタイリッシュな白磁で人気のキム・サンイン、ユン・サンヒョン、ヒュン・テジュはじめ、20人ほどの若手作家を中心に扱い、若い世代、特に男性客の支持も得ている。ソウル市内のアクセスしやすいエリアで入りやすく、見やすく、値段も手頃。手馴染みを確かめてから求めよう。
工藝 長生壺(コンイェ チャンセンホ)
ここで買えば間違いないという安心感
アンティークショップを営む両親の下で育ち、「母のお腹にいるときから目利きだった(笑)」と言う店主チョン・ヒョンジュさんは、大学で陶芸を学び、大学院では美術史を専攻した。確かな美的センスでセレクトされた器は、どれも主張しすぎず、静かな雰囲気で、すっと生活に馴染んでくれそう。
「自分と同世代の1980年前後生まれの作家の作品を中心に集めたかった」ということで、現在はその世代を中心に常時4~5人の作家、時には日本人作家を扱うことも。最近はガラスの器も人気で、選ばれた作品を見れば、その佇まいが白磁、さらには李朝の家具とも見事にマッチすることがよくわかる。仁寺洞(インサドン)の静かな通りにあって、気軽に訪ねてみたい一軒。
LVS CRAFT
クオリティの高さとバラエティに圧倒される
ソウル市中心部から少し離れ、急な坂を上った高台の高級住宅街にある邸宅。中に入ってびっくり。こ、これは。まるで倉庫のように、あの有名作家、この人気作家の作品が棚に無造作に並んでいる。韓国のみならず、日本や中国のアンティークを系統立てて収集する店主のイ・ウォンジュさんは、市中心部で現代アートを扱う〈ギャラリーLVS〉も運営する敏腕。
この店はそのアーカイブも兼ねた一軒で、1992年生まれの娘、ユジンさんが仕切っている。どれもスタイリッシュな器ばかりかと思いきや、ごく普通の日本の小皿も並んでいたりして、そのギャップも面白い。人気作家の初期作品も見つかる。宝探しのように、自分だけの掘り出し物を探してみたい。
LEEUM STORE
知っておきたい工芸作家を一望できるセレクト
考古資料から現代アートまで、サムスングループ創始者のコレクションを展示する美術館〈リウム〉。マリオ・ボッタ、ジャン・ヌーヴェル、レム・コールハースという大建築家3人が1棟ずつ設計を手がけて話題になった。〈リウム ストア〉は2021年、その館内カフェの一角をリニューアルしてオープン。
いわゆる通常のミュージアムショップと異なり、館内の展示とは直接、呼応していない。代わりに陶器、ガラス、漆器、金属、紙、ファブリックなど、今知るべき韓国のクラフトをセレクト、編集したショールームのような店となっている。アーティストがデザインしたアクセサリーやグッズなども販売。時期ごとに作家の入れ替えもあり、まず寄りたい一軒。
1994 SEOUL
韓国伝統の菓子とお茶をコースで体験しよう
ソウルでは感度の高い人たちの間で、今、お茶が流行中という。緑茶だったり中国茶だったり抹茶だったり、幅広い種類のお茶と、消えつつある韓国の伝統菓子をコース仕立てで味わえる、新名所ともいうべきカフェがオープンした。店主は店名に冠した通り、1994年生まれのイ・ミョンジェさん。
両親が始めた餅屋の息子として生まれ、母の薦めで、師匠ソ・ミョンファンについて6年、みっちりと韓菓の基礎を学んだ。キリッと張り詰めた空気の中で一品ずつお茶とともに味わう。その器がいちいち美しく、伝統菓子とぴったり合う。流れる時間に、心身共に癒やされる。この日は、ソウル大学のユ・セリさんの器も登場。器使いのヒントももらえそうな一軒だ。
*営業時間や定休日などは変更の場合があります。公式サイトやSNSを参照してください。所在地はいずれもソウル特別市内です。100W(ウォン)=約11円(2023年8月時点)。