確かに、北米をはじめ、海外のコーヒー文化はカッコいい。でも待てよ。日本には昔から素晴らしい喫茶店カルチャーがあるじゃないか。豆を選べたり、丁寧なハンドドリップだったり。現に、海外がそれを真似しているし。ドリッパーだって、ハリオもオリガミも日本が作ったものだ。日本って素晴らしいんだ。でも、そのアピールがうまくない。
これはもう、自分が日本から世界に打って出るしかない。鈴木清和さんはそう考えた。だから、〈ポール・バセット〉の日本立ち上げから12年勤め上げ、〈グリッチコーヒー〉を開く際、「日本から海外へコーヒーカルチャーを発信する」をテーマとした。ウェブサイトのマークも日本らしくGとCとコーヒーの木をデザインした、家紋風に。
鈴木さんの出発点は、自分の夢は何だろう、本当にやりたいことは何なのか、だった。自分探しの旅は長かった。陶芸やら彫金やらガラス工芸やら思いつく限りのものを試し、それも徹底して試して辿り着いたのがコーヒーだった。「だから、ぶれないです」

店に入ると、ずらりと並ぶのが世界から選りすぐり、カテゴリー別に分けられた15種類ほどの豆。それを、スタッフがコンシェルジュよろしく、産地や豆の個性を説明し、客の好みに沿って選び、バリスタが最高の一杯を淹(い)れる。それをカラフェに移し、豆の説明をまとめたカードとともに提供。客が程よい一杯を注ぐ。
器は特注。持ちやすく飲み心地がいい。家具はアンティーク。耳にはジャズファンク。落ち着いた雰囲気の中、ゆっくり2杯楽しめる。近頃では、このスタイルに影響される店もちらほら。2015年から世界各都市のロースターがトップレベルの豆を持って集まるイベント『コーヒーコレクション』も主催してきた。
「既成概念に縛られず、これぞ日本のコーヒーという一杯を提供し続け、世界からも注目されるこの業界を、もっと盛り上げていきたい」
