愛って、言葉にする技術が必要
大学に通うことや本を読むことを禁止してくる恋人に対して、「あなたは私の首を縛ろうとする」と言い放ち、関係を絶つリタ。闘争心むき出しの状態で、フランクに「論文の書き方を教えて!」と訴えるリタからは、退路を断たれた女性のすさまじいパワーを感じます。フランクはそんな彼女が書いた論文を「リタらしくて面白い」と評価し、その個性が失われることを望まない。しかし、今の彼女が欲しいのは、労働者階級で培った個性ではなく、試験官を唸らせるような書く技術や相手と対等に話せるだけの自信。そこで、フランクは彼女が言葉の技術を少しずつ身につけて自立することに喜びを感じながら、自分の持っているものすべてを与えようとする。彼はリタに特別な感情を持ち始めるが、彼女は同年代の学生たちとの交流を持ち、みるみる自己実現を果たして、自分の手の届かないところに行ってしまう。それでも、フランク自身もリタに影響され、前向きに自立を目指すようになる。そのプロセスがとても微笑ましいし、そんな2人の関係にはなんとも形容し難い愛を感じます。
そもそもこの物語は、リタのような社会的弱者が言いたいことが言えない構造を問うたものである。自立の素晴らしさよりも、まずは自分を大切にしてほしいというメッセージがあります。2人の関係は、リタがセルフケアを選び、能動的に自分を変えていこうという意志によって築かれたものなのです。