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新宿区

日常の記録写真が膨らませるものは何か。|森 栄喜

 散らかった部屋のベッドの上で。西日が差し込む駅前で。通りがかった夜の公園で。写真家・森栄喜が親しい友人やパートナーを1年間撮り続けた『intimacy』に写し出されているのは、なんてことはない、東京ではありふれた日常風景だ。にもかかわらず、我々がそこに息が詰まるほどの刹那を感じてしまうのはきっと、“社会の抑圧”や“作者の葛藤”などの言葉を並べ勝手に物語を見出そうとするからなのかもしれない。きらき

力道山の愛した店。

 昭和40年代まで渋谷に聳え立っていた、伝説の複合施設リキ・スポーツパレスの2代目総料理長を務めた力道山お抱え料理人、高梨正信さんが腕を振るう洋食屋〈香港〉。興行のプロモーターを引き受けるなど、日本のプロレス史とともに歩んできた彼のもとには、今も錚々たる顔ぶれのレスラーが通う。力道山が最も愛したメニューは、牛肉450gを使った1ポンドステーキをレアで仕上げたもの。東京人の舌に合う飽きのこないオリジ

手塚治虫の愛した店。

 アトムが生まれた町、高田馬場に店を構えて60年目を迎える〈一番飯店〉。ここでは手塚治虫が好きな具材だけで作ってほしいと頼み、執筆中によく食べていた特製上海焼きそばを味わえる。具材はリクエスト通りの鶏肉、エビ、アサリ、イカ、葉野菜、シイタケ、キクラゲ、フクロタケ。紹興酒の香りと素材の旨味が生きている。食べる時間も惜しんで描き続けた手塚はいつも1日1食で、それに合わせて一皿の量も多め。割り箸を使わな

あんなに憧れた学校なのにうまいなって思うヤツはいなかった。|仲條正義

長い話ですよ(笑)。私はね、新宿区になりましたが昔の淀橋区、鳴子坂下で生まれましてね。昭和8(1933)年生まれです。親父は千葉の農家の二男坊で、「手に職を」ってので深川で大工の修業して、当時の東京の再開発でこのへんに来れば仕事もあるだろうっていうことでそこに一家を構えたわけです。戦争が始まって集団疎開があって、それで親父の里である千葉の飯岡ってとこに疎開しましてね。1年も経たないくらいに東京大空