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ざっくばらんで開放的、地元客の憩いの空間。金沢、ケの酒場〈やきとり たかた〉

さすが百万石のお膝元。豊かな食材に恵まれ、食都としての存在感も大。町の居酒屋にも美味があふれる。北陸は能登杜氏の故郷。日本酒の揃えも申し分ない酒都でもある。金沢に何度も来ていて、住人気分で楽しみたいベテラン向けなケの店を紹介。

初出:BRUTUS No.1005「旅したい、日本の酒場。」(2024年4月1日発売)

photo: Sachie Abiko / text: Michiko Watanabe

〈やきとり たかた〉といいつつ、焼き鳥専門ではない。串メニューはあるものの、よろずや酒場の様相。

店内を見回せば、北陸らしく、コンカイワシで日本酒をちびちびという客もいれば、カルパッチョ風の美しい刺し身とビール、レバニラ炒めとラーメンを食べている客も。本棚には『ドラゴンボール』に『進撃の巨人』『幽☆遊☆白書』などのコミックス。この混沌。いったい何屋⁉

京都〈やきとり たかた〉入口
表にはメニューも出ていないが、臆すことなく暖簾をくぐろう。

「26歳で船を買って、40歳までお客さんを乗せる釣り船もやってたんです」と、〈やきとり たかた〉店主・臼谷登美夫さん。その船名がたかた丸だった。現在は、夫婦2人と息子で店を賄うが、ほとんどが顔馴染みの地元客だ。テレビで紹介されたこともあって、観光客もちらほら増えてきたそうだが、毎日のように通う地元客の憩いの場である。

魚は、友人の漁師から直接入手する。なるほど、これはイキがいい。と、店主が気合を入れて釣りアジを極薄に引き始めた。名物の「あじ酢ペシャル」にとりかかったもよう。確かに、これだけ透けるほどに薄く引くには、集中が必要だろう。大皿にきれいに並べたら、甘めのたれをかけて出来上がり。春先はホタルイカの石焼きも名物だ。

何を食べてもおいしいし、お手頃。皆、思い思いに楽しむ、これぞ酒場。金沢の夜はなかなか更けそうにない。

京都〈やきとり たかた〉あじ酢ペシャル、甘えび紹興
手前はあじ酢ペシャル980円(ハーフ550円も可)。奥、甘えび紹興酒1,300円。生ビール中500円。

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