〈やきとり たかた〉といいつつ、焼き鳥専門ではない。串メニューはあるものの、よろずや酒場の様相。
店内を見回せば、北陸らしく、コンカイワシで日本酒をちびちびという客もいれば、カルパッチョ風の美しい刺し身とビール、レバニラ炒めとラーメンを食べている客も。本棚には『ドラゴンボール』に『進撃の巨人』『幽☆遊☆白書』などのコミックス。この混沌。いったい何屋⁉

「26歳で船を買って、40歳までお客さんを乗せる釣り船もやってたんです」と、〈やきとり たかた〉店主・臼谷登美夫さん。その船名がたかた丸だった。現在は、夫婦2人と息子で店を賄うが、ほとんどが顔馴染みの地元客だ。テレビで紹介されたこともあって、観光客もちらほら増えてきたそうだが、毎日のように通う地元客の憩いの場である。
魚は、友人の漁師から直接入手する。なるほど、これはイキがいい。と、店主が気合を入れて釣りアジを極薄に引き始めた。名物の「あじ酢ペシャル」にとりかかったもよう。確かに、これだけ透けるほどに薄く引くには、集中が必要だろう。大皿にきれいに並べたら、甘めのたれをかけて出来上がり。春先はホタルイカの石焼きも名物だ。
何を食べてもおいしいし、お手頃。皆、思い思いに楽しむ、これぞ酒場。金沢の夜はなかなか更けそうにない。
