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地元客が贔屓にする、観光地からちょっと離れた穴場。金沢、ケの酒場〈貴いち〉

さすが百万石のお膝元。豊かな食材に恵まれ、食都としての存在感も大。町の居酒屋にも美味があふれる。北陸は能登杜氏の故郷。日本酒の揃えも申し分ない酒都でもある。金沢に何度も来ていて、住人気分で楽しみたいベテラン向けな店を紹介。

初出:BRUTUS No.1005「旅したい、日本の酒場。」(2024年4月1日発売)

photo: Sachie Abiko / text: Michiko Watanabe

金沢酒場旅、ビギナーに強く推したいのは〈酒屋 彌三郎〉〈よし村〉の2店舗。旅の羅針盤として、しっかりと道案内をしてくれるはずだ。これまで何度か訪れ、加賀料理にも舌鼓を打ってきたよ、というベテラン旅人には、とっておきへお連れしたい。

1軒目は〈貴(き)いち〉。金沢駅の西側。何もないような通りにポツンとある。知らなければ、まず行かない場所だ。カウンターとテーブル席がいくつか、なかなかしゃれた造りの店内。店主・明地(みょうち)貴一朗さんが、ワンオペで切り盛りする。開店して2024年で11年。ほぼ常連のみ、そしてほぼ1回転しかしない。

金沢〈貴いち〉店内
調理のすべてをこなす店主・明地さん。さすがの手際良さだ。

大阪の料理屋で10年以上修業し、料理長にまでなった。白衣は着ない。「堅苦しいのが苦手。だから、普段はTシャツでやってます」。味はもちろんのこと、盛り付けに目を見張る。美しいのだ。料理人として、誠実に料理に向かってきたことがよくわかる。一品ずつに〈貴いち〉流の遊び心が凝らされているのもいい。

例えば、おまかせ3品は日によって異なるが、焼き物より、甘鯛の塩焼き。ウロコをカリカリに焼いてのせてある。ほんのつまみにもかかわらず、何と丁寧な。それから、「貴いちのエビマヨ♡」。エビマヨとカリッと揚げた加賀の車麩を串で刺してピンチョスに。どちらも食感が心地よい。

メニューを眺めると、とてもワンオペとは思えない充実ぶり。地魚や加賀野菜、焼き魚に和牛カツなどの肉料理。せっかくなら1人よりも何人かで行った方がよさそうだ。

日本酒は冷酒中心で、燗は2種。「隠し玉もありますよ」。古都の居酒屋は掘り甲斐がありそうだ。

金沢〈貴いち〉刺身盛り合わせ
刺身盛り合わせ。この日は天然タイ、天然ブリ、マグロ、甘エビおぼろ昆布〆など。1人前2,500円~で内容は応相談。

地元客が贔屓にする、観光地からちょっと離れた穴場。金沢、ケの酒場〈貴いち〉

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