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井口可奈のお笑いライブ偏愛日記:第25回『かが屋の大カロ貝展』

小説、俳句、短歌などを書く井口可奈が、訪れたお笑いライブを熱く語る連載、第25回。前回の「完全寄席 雷電」も読む。

text: Kana Iguchi

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配信視聴日:6月12日
公演名:第5回かが屋単独ライブ『かが屋の大カロ貝展』

『かが屋の大カロ貝展』フライヤー

日程が合わなくて行けなかったかが屋の単独の配信があることを知り、お~見てみるか、くらいの気持ちで再生したら、すっかり心をかが屋に持っていかれてしまいました。

最初と最後に映像がある以外はコントだけで構成されたライブで、世界観は繋がっていたりいなかったりというもののようです。わたしはこのライブ全体からやさしさを強く感じ取りました。

コント内に登場する人物は変わった物事をゆるやかに受け入れていくことができ、感情の齟齬(そご)があってもちゃんとごめんなさいができて、対話を試みることに挑戦しています。その世界はとても温かくて、人間はかくもやさしくあれるのかと思わされました。

特に好きだったのは『布団』というコント。賀屋が演じる母親のいつもと違う自然体である様子におどろく息子・加賀がそれを受け入れる過程が細かく描かれています。

今回のライブでは最後に1人になって終わるコントが多かったように感じられました。それは、1人でいるときにこそ2人でいた時間を思う、というような意味合いがあるのかもしれないと筆者は考えます。1人になったときに現れるセリフは2人でいるときには出せない素直さを持っていて、それって本当のやさしさの表れだよなと感じ入ってしまいました。

最初と最後の映像には、周りの人たちを含めた皆のやさしさで成り立つ魔法があると思います。魔法はいつか解けるのかもしれないけれど、解けない魔法もあり、解けるときはやさしくあってほしいと願ってしまいました。

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