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井口可奈のお笑いライブ偏愛日記:第5回『解散、断固すいません』

小説、俳句、短歌などを書く井口可奈が、訪れたお笑いライブを熱く語る連載、第5回。前回の「第4回『HAVE A NICE DAY!』」も読む。

text: Kana Iguchi

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公演日:8月27日
公演名:『解散、断固すいません』

『解散、断固すいません』

ながく応援してきたコンビ、キズマシーンの新ネタライブが解散ライブに変わったのは開催の数日前だったと記憶しています。ツッコミのカミノシュウヘイは芸人を続け、SAMIDAREは芸人を引退するという知らせを見て、頭がついていかないまま、当日、劇場に向かいました。

SAMIDAREの中二病が光るコント「ダークネスヤンキー」からライブははじまりました。転換を挟みながらどんどんネタが続いていきます。「連れ子」はカミノの女装が見どころのネタで、会場は笑いに包まれました。「催眠術」は店員と客が催眠術のかかる範囲を検証するばかばかしさに笑ってしまいます。かなり変な登場人物がキズマシーンのコントにはたくさん登場し、その人なりの生き方が心情の動きを表現することで描かれることが彼らのコントの魅力です。

着替えの時間にはトークをしたり、昔のネタを流したり、SAMIDAREの本当に聴いていられない生カラオケが流れたりしました。やっぱりキズマシーンって面白いよな、と思ったときに在日ファンクの「きず」が流れてはっとなりました。キズマシーンの出囃子です。ようやくこれは解散ライブなのだということを思い出しました。

最後のトークでは2人ともいつものように適当に喋っていて、ごく普通のライブみたいに感じられました。しかし、トークとリズムネタが終わって、暗転後にもう一度「きず」が流れたときとても泣いてしまって、キズマシーンはタイミングに恵まれなかった、ということを思いました。こんなに面白いネタをするのに、大きな仕事の機会がたまたま彼らに回ってこなかった。それだけなのに。明転しても拍手はなかなか鳴りやみません。2人のこれからが良いものであることをただ願いました。

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