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井口可奈のお笑いライブ偏愛日記:第2回『小松海佑の90分』小松海佑

小説、俳句、短歌などを書く井口可奈が、訪れたお笑いライブを熱く語る連載、第2回。前回の「第1回 怪奇!YesどんぐりRPG『ギャし野グん「恋」』」も読む。

text: Kana Iguchi

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公演日: 6月10日
公演名: 『小松海佑の90分』

昨年末に銀兵衛を解散後、ピン芸人として再出発した小松海佑。その活動の中心である漫談はますます革命家然としてきていて、身近なことをテーマにしつつ脳を揺さぶる世界観を提示し、あたらしい思想を与え続けています。彼の、客と芸人という関係を超えてくるような語り口や、どこか客観的なものの見方、そして言葉が駆け抜けていき爆発していくネタの方法論が垣間見えたのが、ワンマントークライブ『小松海佑の90分』でした。

登壇してきた小松はしばらく普段の漫談のように立ったままカニカマサンドについてなど話します。自分の生い立ちを語るという段になって着席し、ノートのメモの話し終わった内容に斜線をいれていきました。小松はいろいろな種のようなものをくっつけることでネタを作っていると語りました。それを表すかのように、ノートのメモにはトピックがばらばらに並べてあるようでした。

特に、小学生の頃父親に将来の夢を聞かれた小松が、特に夢はなかったけれど「世界征服」と父に答えると「どう世界征服をするかのプランを考えたほうがいい」と返された話は彼のシニカルさが垣間見えるものだと思いました。
 生い立ちを語り終え、ライブがすでに80分経っていると知った小松は立ち上がって怒濤の語りを始めます。時系列に関係なく思い出した順に次々とエピソードを話す様子は星座をつくらない星空のようで、うつくしく、この語りがいつまでも続けばいいなと願ってしまいました。

終演後さっと舞台を去っていった小松のまっすぐな背には強い希望が詰まっているようでした。そんな強い輝きを放つ小松海佑に、みなさんも洗脳されてみませんか?

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