食欲を刺激する味の描写、店員さんとのコミュニケーション、そして愛のポエム。その唯一無二の食レポスタイルに興味を惹かれ、書き手について調べてみる。Twitterのプロフィールには一言「神様は余りもので私を作った」……ただものではなさそう。性別・年齢・職業非公開の謎多き人物に迫るべく、インタビューを申し込んだ。
noteから始まった、スパイス異国飯めぐり
「食べ歩きを始めたのは、約3年前。『note』を毎日更新するために、ネタ切れがなさそうな世界の料理をテーマに。当時はこんなにハマるとは思ってもみませんでした」
元来、食べること、特にカレーが好き。自宅の徒歩圏内にある高田馬場や新大久保の存在がガソリンとなって、異国飯への愛が加速していった。
「今まで出会わなかった文化圏の人と知り合えるし、話す前は少し怖いと思っていた人が実はいい人だったということも多いんですよね。食だけで、すごく仲良くなれる。現地語がわからなくても、英語やジェスチャーでなんとか伝えます。まさに海外旅行の気分で、仕事が終わったら『さあ旅に出るか!』という感じでお店へ」
最後の一文字まで読んでほしいから、食レポをエンタメに
軽いリズムで綴られるnoteの記事は、いつもポエムで締めくくられている。
「楽しかったり泣けたりという食レポってあんまりないと思うけど、そういうエンターテインメントにしたいと思っていて」。
実際に、冒頭で紹介した〈タイ居酒屋 トンタイ 本店〉の記事を書いたときには、「泣きました」と報告してくれた読者もいたという。
現在は、第三十四回文学フリマ東京(5月29日、東京流通センターにて開催)に向けて、「ナンとカレーと時々孤独」という本を自費出版。写真と物語で構成し、東京以外の人も楽しめるような内容に。岩手や関西での文学フリマにも参加予定だ。