Talk

Talk

語る

映画『エンドレス・サマー』のアートワークができるまで

あの伝説のポスターは、意外な手法で作られていた。ジョン・ヴァン・ハマーズヴェルド自身が明かす、制作裏話。

Text: Akihiro Furuya / Cooperation: Tatsuaki Totani

サーファーが熱狂した
数々のアートワーク。

ジョン・ヴァン・ハマーズヴェルド(以下、JVH)のクリエーションの源泉はサーフィンだ。痛快で甘く危険な60年代のサーフシーンは彼をストークさせた。

波をモチーフとした抽象的なドローイング、一時代を築いたサーフボードブランクス(サーフボードのベースとなるウレタンフォーム)の〈CLARK FOAM〉や80’sの人気サーフブランド〈JIMMY'Z〉のロゴ、サーフィンコンテストの最高峰、パイプマスターズなど、サーフイベントのポスターや〈VANS〉とのコラボスニーカーなどと、関わりは多岐にわたる。

中でもマスターピースとも言える作品が映画『エンドレス・サマー』のアートワーク。あの鮮やかでセンチメンタルなアートワークはいかにして生まれたのか? 

彼がブルース・ブラウン監督からこの仕事のオファーを受けたのはちょうど米『SURFER』誌のカバーデザインをしているときだったという。当時、彼は『SURFER』誌のアートディレクターも務めていた。余談だが、『SURFER』誌は多くの才能溢れるアートディレクターを輩出している。90年代、『Ray Gun』誌などグラフィックデザインに多くの影響を与えたデヴィッド・カーソンもそのひとりだ。サーフカルチャーは、のちのストリートカルチャーも含め、いつの時代もアートシーンに大きな影響を与えていく。

60年代、『SURFER』magazineのジョン・セバーソンに声をかけられたジョン・ヴァン・ハマーズヴェルドは、約1年間アートディレクターを務める。写真はJVHが撮影したアーティストのリック・グリフィン。3人で一時代を築いた。

映像を自身のグラフィックと
ミックスして“夏”を増幅させた。

『エンドレス・サマー』のアートワークに際して、当初、JVHが見ることができたのは映画のタイトル部分のサンセットだけだったらしい。「サーフィンの入り口はいつも太陽に向かって歩くということだろ。太陽がどの位置にあろうと、太陽というのはとても重要なんだ」。

そこで彼は太陽と、ブルース・ブラウン監督のアイデアによるあのサーファーたちの佇まいを合成することで、イメージを増幅させた。ビーチでのサーファーたちはモノトーンで、ビーチと空、そして太陽の強烈な色彩は切り絵を使って表現した。

「画材屋に行ったときカラーペーパーが並んでいて、デイグロー(派手な色)のそれを見たとき、フィーリングを得てね! 派手な色は僕を『ビーチに行こう!』という気分にさせたんだ。太陽はホットで、空もビーチもホットだよね。それらの派手な色はサーフィンのそのような側面を表しているんだよ」

こうしてJVHは先鋭化するポップアートに情緒を内包した。