レコードジャケットやポスターが最も身近なアートミュージアムだった頃、ジョン・ヴァン・ハマーズヴェルド（以下、JVH)はアーティストとしてだけでなく、キャピタルレコード社のアートディレクター、アップル・コーポレーションのデザイナー、〈PINNACLE CONCERT〉のプロモーター兼デザイナーとして多くの有名ミュージシャンのアートワークに関わる。
ローリング・ストーンズ、ビートルズ、クリーム、ビーチ・ボーイズ、グレイトフル・デッド、KISS……、関わったアーティストはロック・シーンそのものだ。ポップカルチャーをキュレーションするJVH美術館へ、ようこそ。
60年代
サーフムービーの傑作、『エンドレス・サマー』のオリジナルサウンドトラック。切り絵によるビビッドなアートワークは衝撃的だった。（1966年） 
キャピタルレコード時代に関わったビートルズの『マジカル・ミステリー・ツアー』のカラフルなアートワーク。サイケデリックなアプローチながら、手書きによるポップなテイストが今も新鮮。（1967年）
70年代
ソウル・ジャズを牽引したオルガン奏者、ジミー・マクグリフの『BLACK PEARLは“Johnny Face”のキャラクターをモチーフにした。（1971年） 
ローリング・ストーンズ関連ではアンディ・ウォーホルによる『スティッキー・フィンガーズ』に対して、JVHはこの『メイン・ストリートのならず者』。ロバート・フランクの写真をコラージュしたこのアルバムは近年ではストーンズの最高傑作と言われている。（1972年） 
スティーブ・ミラー・バンドの名盤、『ジョーカー』。タイトルチューンの「ジョーカー」は全米ナンバー1に。鮮やかな『エンドレス・サマー』とはまた違うJVHの色彩感覚とアートワークが象徴的。（1973年） 
クラシックに仕上げたスライ＆ザ・ファミリー・ストーンの『SMALL TALK』。スライの表情は低迷するバンドの現状を象徴するようでもあった。（1974年） 
日本語をふんだんに使ったKISSのセカンドアルバム『地獄のさけび』（Hotter than Hell）。メンバー名もカタカナで表記されコッテリ。漢字で書かれた「力」はパワーを日本語で表現したかったそうだ。(1974年) 
『Skeltons from the Closet』と題されたグレイトフル・デッドのベストアルバム。バンドのアイコンで もあるスケルトン＆ローズをあしらったアルバムジャケットはバンドへのオマージュを感じさせる。（1974年） 
「ダンス・ウィズ・ミー」のヒットをきっかけに、より西海岸的AORサウンドに移行していったオーリアンズの『夢のさまよい』（Waking and Dreaming)。ポートレート写真もいかにもウエストコースト風。（1976年） 
ジム・モリソンの死後にリリースされた『An American Prayer』。ジム・モリソンが残した詩の朗読テープにドアーズのメンバーが音をつけたというリスペクトに溢れたアルバム。（1978年） 
渋めで玄人好みのシンガーソングライターのジョン・ハイアットのサードアルバム『SLUNG LINE』。79年の作品だがビジュアル的にはゴージャスな80年代中期の香りが。（1979年）
80年代
ニューウェイブ時代の到来を意識した無機的なアートワーク。スターダムにのし上がったブロンディをマンハッタンで撮影した『オートアメリカン』。1980年リリース。 
クイーンがサウンドトラックを担当した映画『フラッシュ・ゴードン』。キャッチーなサウンドもさることながら、一度見たら忘れられないこれまたキャッチーなアートワークもJVHの作品だった。（1980年） 
70年代のディスコブームを牽引したKC & ザ・サンシャイン・バンドのベスト。あえてバンドロゴと罫線だけを使って静かに仕上げている。（1980年） 
1982年アメリカのアルバムチャートの1位に輝いたジョン・クーガー（のちにジョン・メレンキャンプと改名）の『アメリカン・フール』。シングルカットした「JACK AND DIANE」も大ヒット。（1982年） 
セックス・ピストルズのジョン・ライドンが立ち上げたPILことパブリック・イメージ・リミテッドの『This is what you want…』。パンクと狂気をイメージした写真。（1984年）
00年代
2005年ロンドンのロイヤル・アルバートホールで行われたクリームの再結成ライブのアートワークを担当。クリームのデビューアルバム『カラフル・クリーム』をJVH的解釈のドローイングで仕上げた。
