取材・文:トロピカル松村(編集ライター、〈CRT〉ディレクター)
ゴロー(東京/巣鴨)
老舗・登山靴メーカーにある名作カジュアルシューズ
1973年創業の日本が誇る登山靴メーカー〈ゴロー〉。自社製造自社販売を貫いているだけあって、メディアで取り上げられることも少なくない名店だ。普段は山仕様のブーツがフィーチャーされることが多いのだが、そのうえ、ここはヘビーデューティなスタイルがトレンドだった70年代に、どこよりも早くチロリアンシューズやモカシンを日本で作っていた功績も持っている。そのため、カジュアルシューズのラインナップも流石のもの。
メーカーゆえの強みは数多く、店頭では必ず購入者の足を計測し、フィットしたものを作って提供する。言わずもがな修理も対応。店の2階で靴を縫っていた職人が、縫い糸が切れにくいよう糸一本一本に松脂(まつやに)を塗る所作はつい見入るほどに美しい。使っている靴の革はなんと厚さ約3mm!ヨーロッパ中を巡り見つけたらしい。お世辞にも軽いとは言えないが、履くとびっくり。マシンメイドにはない職人芸の足馴染みに感動するのだ。
フクゾー洋品店(神奈川/横浜)
70年以上、ひっそり息づく横浜のトラッドウェアが粋
品の良いブティックが並ぶ横浜元町ショッピングストリートにある、ここ〈フクゾー洋品店〉はトラディショナルファッションを超がつくほど古くから発信。国内生地・自社製造に重きを置いて販売してきた老舗だ。1950年代頃から婦人服店として有名に。
70年代後期にハマトラファッションで注目を集めたこともあるためウィメンズのイメージが先行しがちだが、実は店舗2階のメンズフロアに並ぶものも逸品ばかり。シャツを筆頭に製品の多くは、裁断や縫製、ロゴの手刺繍に至るまで2階奥に設けられた工房(本格的な工場)にて製造。しかも工程を分散させず最初から最後まで一人が縫うように心がけているという。その丁寧な仕事ぶりがじかに見られるのもここの魅力。
ジーンズショップ モチヅキ(神奈川/藤沢)
街のジーンズショップが作るニッチなオリジナルが評判
レプリカジーンズも、フレアパンツも、ワークパンツもなんでもござれ。ジーンズを専業として40年以上になる、神奈川・藤沢にある〈ジーンズショップ モチヅキ〉には地元の老若男女が訪れる。前述した多種多様なジーンズを扱っていた店主の望月智好さんは扱う商品に合った「もう少しこういうシルエットなら」という願望を叶えたものが欲しいと思うように。
10年ほど前から店内に工房を作り、オリジナルジーンズを手がけるメーカーになった。近くのセレクトショップと協業で70sなジーンズを作ったり、常連客の個人オーダーにも対応したり。ヴィンテージライクなものもあれば、徹底してリーズナブルなものもある“街のジーンズ屋さん”が手がけるジーンズが面白い。
神戸ザック 新長田店(兵庫/神戸)
手仕事まで受け継ぎ守られた神戸発祥のバックパック
ツウな登山家が支持していた〈神戸ザック〉が手がける老舗ブランド〈イモック〉のバックパックが近年注目を集めている。創業者の星加弘之さんが高齢になり閉業しようとしていたところ、セレクトショップ〈乱痴気〉の前川拓史さんが承継したのがその理由。
10年以上前から自身の店で取り扱っていた〈イモック〉だけに愛情は人一倍強く、新たにショールーム兼店舗を作って、工房も併設。古きを重んじ、実際に使われていた型紙やミシンも丁寧に保管し活用できるようにした。しかも、それだけでなく製造には自身が指導するファッション学校の生徒らを雇用。各種名品が変わらないどころか、質を向上するよう取り組んでいるのだから人気が出るのも素直に頷ける。
もちはだ(兵庫/加古川)
独自開発の機械から生まれる寒さ知らずの伝統ニット製品
寒いから冬が苦手、という人は絶対に頼ってみてほしい〈もちはだ〉のニット。店舗は冬場のみの不定期オープンで今年は未定らしいが、兵庫の加古川に大きな工場を所有。ここで生まれるニット製品は、靴下も、インナーも、ネックウォーマーも、すべて1970年に自社が生み出したというオリジナルの丸編み機を使用しているのだ。
特許を取得したこの機械がとにかく優秀。生地を編む段階で起毛させていくから、全体を均一に起毛させるだけでなく、起毛時に生じるパイルのループ破壊を防いでくれて保温性も肌触りも別格。物へのこだわりが強い冒険家・植村直己氏が南極大陸冒険で使用していたハイソックスのメーカー、と聞けば試したくなる人も多いのでは?