ビートニクを代表する作家が
『オン・ザ・ロード』を書いたわけ。
1950年代から60年代にかけて若者から圧倒的に支持された文学運動“ビート・ジェネレーション”。それをウィリアム・バロウズとアレン・ギンズバーグらとともに率いたジャック・ケルアックが亡くなり、2019年で50年が経つ。その人生を映画で確認して、ちまたに彼の話題が溢れた時に知ったかぶる準備をしておくのも悪くないだろう。
彼の主著である『オン・ザ・ロード』が映画化されているのがまずありがたい。これはケルアックの自伝的小説でもあるので、小説の内容と同時に彼の人生についても知ることができる。とはいえ、描かれるのは、作家志望の青年サル(これがケルアック)が、自由奔放に生きるディーン(これは作家のニール・キャサディがモデル)に触発され、共にあちこち旅しながらドラッグやセックスを謳歌する姿ばかりだ。
だから、知識として頭に入れておくべきは、その雰囲気とラストシーンだけだと言っても過言ではない。自由すぎるディーンに愛想を尽かしたサルが、旅の合間に残していたメモを頼りに衝動的にタイプライターを打ち始めるのだ。こうしてできたのが小説『オン・ザ・ロード』というわけだ。
本作にも登場するバロウズやギンズバーグとの関わりをさらに知りたければ、『キル・ユア・ダーリン』『HOWL』も併せて観るといい。いずれもギンズバーグの伝記映画だが、前者では3人の出会いはもちろん、ケルアックとバロウズの共著『そしてカバたちはタンクで茹で死に』の題材となったある殺人事件の顛末が、後者ではケルアックがいかにギンズバーグのよき理解者であったかが、それぞれ語られる。義務教育では教えてくれない文学史も、映画でなら学べるのだ。