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チェ・ゲバラの偉人伝。彼を知るための3本の映画

名前は耳にしたことがあるけど、知ったつもりでよく知らない。そんな偉人がいたりする。主役脇役を問わず、彼らが登場する映画を観れば、手に取るように生きざまがわかる。

text: Keisuke Kagiwada

英雄か、悪人か。
キューバ革命の闘士の本当の姿はどっち?

チェ・ゲバラほど、顔と功績の認知度の差が著しい人物もいない。日本においては、“Tシャツやポスターの人”くらいの認識の向きも多いのではないか。グッズを持っていようがいまいが、功績も知っておいて損はない。

『モーターサイクル・ダイアリーズ』が描くのは、若かりし日のゲバラの姿だ。アルゼンチンで医学生をしていた23歳の彼は、先輩であり生化学者のアルベルト・グラナードに誘われ、一台のバイクにまたがって南米大陸縦断の旅に出る。その中で、チリのチュキカマタ銅山で仕事を得ようともがく労働者や、ペルーのマチュ・ピチュで暮らすハンセン病患者と出会い、南米の厳しい現状を目の当たりにするのだった。この経験が彼を革命家へと目覚めさせたのだ。

その後、ゲバラはフィデル・カストロと出会い、キューバの独裁政権打倒を目指す革命軍の一員となる。このあたりは『チェ 28歳の革命』に詳しい。同作を観て、ゲバラに惚れない人はいないだろう。貧しき人々のために命懸けで闘いながらも、無駄な殺生には手を染めず、革命を成し遂げてしまったゲバラの姿は英雄そのものだ。

しかし一方で、『ゲバラ!』は彼を英雄として描いていない点で注目に値する。作られたのは、ボリビア革命に参加中のゲバラが、当局に捕らえられて処刑された直後の1969年。驚いたことに、同作によれば、ゲバラはキューバ革命の黒幕であり、革命中に大量虐殺を指示したのも、キューバにミサイル基地を造ったのも、すべて彼の仕業であるとされるのだ。どちらがより真実に近いかは、自分で資料を当たってみるしかない。しかし、こうやっていろいろな視点からの映画を観れば、いたずらに英雄視せず、立体的にゲバラのことを把握できるだろう。