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暗いことはいいことだ。木村ユタカ×勝田隆夫、インテリアのプロ2人の自宅照明対談

1年半ほど前に引っ越しをした〈コンプレックス〉の木村ユタカさんと、昨年自宅が完成したばかりのインテリアデザイナー、勝田隆夫さん。2人の家の「居心地のよさ」の要、照明について聞きました。

Photo: Satoshi Nagare / Text: Tami Okano

程よい暗さと照明のデザインで作る、
夜も居心地のいい空間

勝田隆夫

木村家のダイニングのシャンデリア、かわいいですよね。

木村ユタカ

新しい家はどんなインテリアにしようかなと考えながら一番最初に選んだのが、あのシャンデリアだったんだよね。華美でもなく、ただシンプルというだけでもない。丸い光がいっぱいあるって面白いなと。

うちは外国人向けのマンションで、ベースは何にもないただの箱だから、「カッコいい」より、ちょっと温かみがある「かわいい」ものを合わせたかった。勝田くんは家に使う照明って、最初から決めてたの?

勝田

セルジュ・ムイユのランプは昔から好きで、いつか自宅でも使いたいと思っていたので、リビングにセルジュ・ムイユは迷わなかったですね。順番としては、前の家でも使っていたライト付きのウォールシェルフをまた使うことが前提だったので、そこにプラスする照明をどうするかで決めていった感じです。ウォールシェルフの小さなライト、何を照らすわけでもないんですけど、あれ、すごい好きで、絶対に点けるんです。

木村

照度はなくても、小さいライトって、雰囲気が出ていいよね。

ヴィンテージのシャンデリアがある木村邸のダイニング
木村邸のダイニング。この家のインテリアで一番最初に決めたというシャンデリアはイタリアの1970年代のヴィンテージ。フロアライトはマイケル・ヤング、95年のデザイン。(木村ユタカ)
リビングにセルジュ・ムイユの《シュスポンション・トワ・ブラ・ピヴォタン》
リビングにはセルジュ・ムイユの《シュスポンション・トワ・ブラ・ピヴォタン》。テレビを収めている棚はコンプレックスのライト付きウォールシェルフ《ADNET》。(勝田隆夫)

勝田

リビングに1人でいるときは、その小さなライトとセルジュ・ムイユと、スタンドライトの3点で過ごします。でも家族だけだと、どれも使わず、天井のダウンライトだけを、光量マックスでドバッと点けてたりする。まあ子供に「宿題やんなさい!」ってときに雰囲気出してる場合じゃないのはわかるんですけど。家に帰ってそうなってると残念で、理想のパターンに調整し直したりします。

木村

うちはリビングのスタンドと、ダイニングのペンダントしかほとんど点けないですね。夕食を終えてソファに移動すると同時にペンダントも消して、スタンドだけでぽやーんとしている。

勝田

夕方って、どうしてます?自然光でバッチリ明るい昼間でもなく、真っ暗な夜でもない、暮れ始めてからしばらくの、あの、微妙な時間。僕は夕方の、あの寂しい感じが苦手で、照明を点けてもまだよくわからないくらいの早めから「点けたい派」なんです。で、外が真っ暗になると、今度は照明の方が明るすぎるから、照度を絞っていく。

Laura Lampがあるリビング
リビングには、マッシュルーム形のガラスのシェードを持つスタンドライト《Laura Lamp》を2灯。天井にはダウンライトも備わっているが、ほとんど点けることはないという。(木村ユタカ)

木村

その微妙な時間は……暗っ、と思いながら、そのままかなあ。

勝田

点けない派。外国人ですね。

木村

俺さ、暗いの、全然大丈夫なんだよね。明るい、暗いの話でいうと、そもそも、日本の住宅は、明るすぎる気がする。海外に行くと、いい家って、暗いよ。

勝田

天井照明がないところも多いですもんね。むしろ昼間だってちょっと暗い方がいいという。

木村

いろんな感覚の違いがあるとは思うんだけど、これだけ家についての情報が豊富で、インテリアへの意識も高いのに、照明の重要度って、日本ではまだあまり理解されていない気がします。仕事場と住居が別々の人であれば、大抵の場合、平日の昼間は家にいなくて、長くいるのって、夜のリビングとダイニングでしょ。その空間を照明でどう暗く、居心地よく作るかって、大事だと思う。

勝田

それって、住宅のインテリアにおける、照明のコストの掛け方とも関係してくると思うんですけど、例えば、天井のダウンライトでも一般の住宅では調光すらついていないところが多い。オンかオフのみ。でも本当は、どのくらい暗くできるかがカギで、程よい暗さ+αで、空間のポイントになる意匠照明を組み合わせられるとベストかなと思います。

木村

デザインに特徴のある意匠照明があると、それだけで部屋ができる。そこをどうするかは、もしかしたら、椅子やテーブルを選ぶよりも大事なんじゃないかなぁ。

勝田

大事ですよ。リビングとダイニングのペンダントっていったら、家の主役ですからね。ダイニングは〈アパラタス〉にしたんですけど、あれはもう、照明器具というより、作品ですね。物として美しい。

ダイニングのペンダントはトライアド6
ダイニングのペンダントは、ニューヨークを拠点に活動するデザインスタジオ、アパラタスの《トライアド6》。ダウンライトは店舗デザインでよく使われるモジュレックス。

木村

真鍮のアームや磁器のソケット、ガラスもすべて手作業で作られている「工芸品」。意匠照明の真髄は、電気が点いてなくても存在感があって、オブジェにもなることだと思います。そういえば、自宅を設計するんだったら、照明計画もゼロからできるわけだけど、間接照明は入れなかったの?

勝田

最初はキッチンの吊り戸棚に間接照明を入れて、後ろの壁を照らす計画を立てたんですけど、よくよく考えて、やめました。お店だったら迷わず入れるんですけどね。家だから、過剰な見え方になるより普通がいいなと。「普通」というのは照明に限らず、この家を造るときに常に心がけたことでもあります。仕事柄、自分の頭の中にはいろんなデザインが溢れてしまっているので、家だけは「極力シンプルに、普通に」と。

陶器のシェードを持つフランスのヴィンテージ
キッチンのカウンター上のペンダントは陶器のシェードを持つフランスのヴィンテージ。あえてむき出しの電球のソケットは、アメリカのスタンダードなデザインのものを選んだ。(勝田隆夫)

木村

思ったよりすっきりしているもんね。家具もまだ置けそう。

勝田

家具は……だいぶ我慢してます。住んでいくうちに少しは増えるかもしれないですね。でもまあ、きりがないし、照明と一緒で、極力、抑えめで。

勝田隆夫と木村ユタカ
左:勝田隆夫 右:木村ユタカ