子供スパイスカレー計画
「カレー=辛い」にあらず!?
甘口専門の理由とは?
〈C.S.C(子供スパイスカレー計画)〉は、ポルトガル料理にエッグタルト専門店、個性派もんじゃやカツレツ専門店なども手がける佐藤幸二さんが、2020年にリリースしたレトルトカレーのレーベルだ。
直接のきっかけは、佐藤さんが水野仁輔さん主宰の〈カレーの学校〉第15期に通っていたときに「子供スパイスカレーゼミ」を立ち上げたことなのだが、それにしてもなぜ“子供”に特化することに?
「2005年頃にカレー専門店に携わっていた頃にも“子供カレー”という企画書を書いていたんですよね。辛くなくて子供も食べられて、本気でおいしい!と言われるカレーを作りたいとずっと考えていて」
カレーといえば辛い、という考え方が好きじゃないという佐藤さん。「スパイス全般が持つ香りと、一部のスパイスが持つ辛味とは別物だから、きちんと分けて考えたいなあ、と。辛いものが苦手でも、スパイス料理が好きな人はいますしね」
そうした思いから「甘口=辛くない」カレーを作ったわけだが、そこに秘められた野望がもう一つ。「“今日は何が食べたい?”って聞かれた時に“僕はマトンニハリがいい!”“私はマスタードフィッシュ!”って答えられる子供、水野さんの表現を借りると、未来の“カレープレーヤー”を育てたい!」
かくして生まれた甘口カレーの数々。インドやスリランカ料理店で見かけるカレーの名前が記されているが、異なる点は唐辛子やコショウを一切使わず辛くないこと。でも味のバランスはしっかりとれていて、香りも豊か。子供も、カレー好きな大人も、甘口好きな大人もみんな満足。
吉田カレーの自社工場に潜入
荻窪の行列店が始めた
レトルト作りの全貌。
店主の吉田貴宏さんは新しいことを始めたかった。お客さんの行列は絶えない。でも、新店は作りたくない。なぜなら他人にレシピを教えたくないから。そこで、多くの人が気軽に味を楽しめるようにレトルトを作って、販売だけを誰かに託そうと考えた。実現に向け動いたのは、店のウェブサイトも手がける旧知のデザイナー八木康太郎さん。軽い気持ちで同意したものの、茨の道だったと語る。
「監修でも似た味でもなく、封を切れば吉田が手作りする、あの門外不出のカレーが楽しめる、というのがレトルト作りの条件でした。当初はOEM生産するものと思っていましたから、まさか自社で工場を造るなんて、夢にも思わなかったんです。それこそ手探り状態。図面書きや設備計画、保健所への届け出やプレゼン資料など。ここまでの小規模工場は前例がなくて、数ヵ月間、幾度となく保健所に足を運びましたよ。
でも、本当の勝負はここから。店と同じ味を出すため、試作品を1年以上作り続けました。味のポイントになる魚介だしは1日かけて煮込みます。でも、レトルト化するために、120℃で30分殺菌する必要があるので、舌触りの変化を防いだり、風味を維持するのが大変。水分や油分のコントロールに腐心しましたね。賞味期限の設定は、食品を分析する研究所が定期検査した結果決めます。
悩みの種は製品表示ルール。内容物がわかると、同業者に真似される可能性があるんです。でも、杞憂でしたね。吉田のカレー作りは、その日の天候や材料でバランスを変えて一定の味を維持するんです。レシピを教えたくないというより、教えられるものじゃなかったんですよ」
レトルトカレーが
できるまで