文化の裏に潜む、小さな声を拾う
「様々なカルチャーの社会問題を考える、ということをやりたかったんです。例えばラップにしても、彼らが何を表現しているのか、背景を知ったうえで聴くとより楽しめると思って」。
編集を手がける菅原祐樹さんは、70年代の『宝島』が担ったようなアメリカ文化に肉薄する役割を『inch magazine』で引き受けようとしている。青春を過ごした90年代のインディー誌の影響も大きい。「9.11の後、『米国音楽』がNY特集を組んで堂々と戦争に反対したんです。
編集者の川崎大助さんにその頃の話を聞くと“どの雑誌も対岸の火事みたいな感じだったけど、僕は向こうに友達がいたから”。これこそインディペンデントの良さだなあと」。9.11から21年が過ぎた今、自らの手でNY特集を敢行。
同じく編集者の前田和彦さんはこう話す。「イラクからの帰還兵の話、漫画家・近藤聡乃さんの移民としての物語など、文芸でもジャーナリズムでもないところから小さな声にフォーカスしたい」