愛って、切羽詰まったギリギリの気持ち
映画を好きになったきっかけが、ウォン・カーウァイの『ブエノスアイレス』なんです。初めて観た時、これが愛なんだなと思いました。レスリー・チャンとトニー・レオンが演じた主人公の2人は、喧嘩したり殴り合ったり、離れている時間も長いのに、それでも2人は一緒なんだという感覚があって。それに、2人の役者が素晴らしくて、彼らが実際そこに生きているんじゃないかとさえ思えてくる。役者ってすごいなと思った作品でした。
岩井(俊二)さんの『PiCNiC』にも、『ブエノスアイレス』と近いものを感じました。浅野忠信さんとCharaさん。この2人も、ギリギリのところで生きている。私は、生きるとか死ぬとか、そういう切羽詰まった愛の描かれ方が好きなのかもしれません。
そう思うと、自分の出た映画で恐縮ですが、『ソワレ』もそうですね。この作品も演じた役も、私にとって今も特別なものになっています。共演した(村上)虹郎くんも、恋愛とかではないんですが、本当に大切な存在になりました。
私が出演した前田弘二監督の『こいびとのみつけかた』も色んな愛が詰まった映画なんですよ。私が演じた園子とトワ(倉悠貴)は、ちょっと不器用で変わっているんですが、2人がお互いを思いやる気持ちもさることながら、2人を取り巻く人たちが、みんなそれぞれのやり方で2人に手を差し伸べてくれるんです。現実世界にも、こんなコミュニティがあったらいいなと思いました。