白い空間に色とりどりの花々のアート。“映(ば)え”重視のお店と思うかもしれないが、ジェラートを食べればその認識は覆る。ひんやりした空気を食べているようにエアリーなのに、食材の味は驚くほど鮮やか。〈YAYOI TOKYO〉のジェラートには濃厚とは違う淡麗さがある。その決め手は清らかな水。
「優しいトーンのジェラートに合うのは、ミネラルの少ない軟水。中でも屋久島の水が一番クリアに素材を生かせたんです」と、パティシエの大塚陽介さん。
水をベースに素材感を研ぎ澄ます。そんな和食にも通ずる思考は、優勝を果たした洋菓子の世界大会、『FIPGC』で日本代表として戦うことで行き着いた彼の強みだ。
「なにげない日常を幸せな時間にしてもらいたくて」、気鋭のパティシエでありながらパティスリーではなく、老若男女に親しまれるジェラートの店を開いたのは昨年のこと。『FIPGC』でチーム監督を務めた石川〈マルガージェラート〉柴野大造さんの下で改めて学び、自身のジェラートを作り上げた。
素材感をブーストさせる、ジェラートのためのカクテル
ジェラートに合わせるカクテルは、渋谷〈Bar 石の華〉オーナーバーテンダー・石垣忍さんが監修。実は2人はオープン前から〈PLAYGROUND〉なるユニットを組み、スイーツとカクテルのイベントをたびたび開催していた。大塚さんのお菓子作りを熟知する石垣さんが、カクテルでジェラートの素材感を底上げする。
3種のピスタチオ(ナッティなイタリア産、コクのスペイン産、華やかなイラン産)を緻密にブレンドし、ピスタチオの理想の味を叶えたジェラートには、モスコー・ミュールを。「スミノフブラック」の重厚感が、ピスタチオの奥行きを広げてくれる。
今季からはビールペアリングもスタート。店を構える三茶の街には合うけど、ジェラートにも合う?と半信半疑でショコラジェラートを口に含んでギネスを流し込むと、衝撃が走る。
チョコと黒ビールに共通する焙煎香が鼻を抜け、ビターキャラメルをかけたような苦味にもやみつきになりそうだ。ジェラートとカクテル、時にはビール。ペアリングが日常を新鮮に、ご機嫌に彩っていく。

グレープフルーツのみずみずしさにの金木犀(きんもくせい)の可憐な香りとほのかな苦味。ジェラートの味わいが、ジントニックで研ぎ澄まされる。
〈YAYOI TOKYO〉が提案するアイスペアリング
アイスペアリングの理論と実践、ときどき気分
カクテルとビールでグッと広がる、ジェラートの素材感。