水槽の中に、大自然の景色や生態系を再現し愛でる「ネイチャーアクアリウム」。水草や熱帯植物、流木に石、そして魚などの生物を思いのままにレイアウトし、自分だけの水槽を作り上げる、世界中に愛好家がいる趣味の世界だ。
そんなネイチャーアクアリウムの世界コンテスト「IAPLC」をご存じだろうか?IAPLC(世界水草レイアウトコンテスト)は、世界的なアクアリウム用品メーカー〈ADA〉の創業者であり、ネイチャーアクアリムの創始者である天野尚さんによって発案され、2001年より毎年開催されている業界最大規模のコンテストだ。
世界の水草レイアウターが憧れるコンテスト
IAPLCは「水草レイアウトの世界的な啓蒙」を目的として創設され、世界各国の水槽レイアウトや熱帯魚栽培の専門家、アクアリウム専門誌の編集長らを審査員に迎えて行われるコンテストだ。そのため世界中から応募があり、2021年には2617作品と世界最大規模の大会へと成長し、多くの名水草レイアウター、そしてネイチャーアクアリウムの新しい潮流を生んできた。
参加者はプロ・アマ問わず、自ら製作した水槽作品を写真に撮り、審査は写真作品の状態で行われる。2021年からはデジタルでの応募のみとなり、結果発表の様子は公式YouTubeチャンネルにて世界同時配信で行われ、大いに盛り上がりを見せた。
なお、2022年のコンテストの応募は既に締め切られているが、結果発表は8月27日20時からなので、お見逃しなく。
より「自然的であること」を重視した審査基準
その審査項目はというと、「棲息環境の再現」「長期維持の可能性」「技術点」「オリジナリティと印象度」「自然感の演出」「構図と水草の配色」であるが、毎年作品のレベルもアップしより新しく美しい表現を生み出すためには、参加者も常にアップデートが必要というわけ。
数あるネイチャーアクアリウムのコンテストの中で、IAPLCが重視しているのは“自然的であること”。そのため審査項目の中でも「棲息環境の再現」が重要視されており、採点の50%ものウエイトを占めるのだ。「棲息環境の再現」とはつまり、植物や魚などの生き物の生態系がきちんと再現され、棲みやすいレイアウトであるかという点である。
水草も魚も生き物であり、それらがいかに健康的な環境で育つことができるのか。まさに、自然を愛する〈ADA〉が主催する大会らしい評価基準である。応募の際は、水の状態、植物があるべきところにあるか、生き物との相性など、自然科学的な視点を持ってレイアウトをするべし。
歴代グランプリのスペシャルな水槽作品
〈ADA〉をはじめ、水槽栽培のツールは日々進化を遂げており、今までできなかった表現が可能になるにつれ、クリエイターたちの作品のレベルも格段に上がっている。ここで、2017〜2021年の歴代グランプリ作品を紹介したいと思う。
2017年「Congo」Josh Sim(マレーシア)
2018年「“Yururi(relaxing)”」半田浩規(日本)
2019年「Dream On」Josh Sim(マレーシア)
2020年「Eden」Siak Wee Yeo(マレーシア)
2021年「Ancient Tree/太古の巨木」YOYO PRAYOGI(インドネシア)
自宅の水槽に自然を作り上げ、育てる楽しみ
世界規模のコンテストのグランプリ作品とあって、どれも圧巻のクオリティ。これらが約1.5mの水槽の中で作り上げられていることが驚きである。2018年のグランプリには日本人の水槽クリエイターの作品が選ばれていたり、漫画家のタナカカツキさんも長年応募されていたりと日本人の参加者も非常に多い。
さらに、IAPLCでは2001年の開催以来、コンテストの結果をまとめた『世界水草レイアウトコンテスト作品集』を発行しており、約2000作品が収録されるマニア垂涎の一冊となっている。そのためコンテストでは、作品集に掲載される約2000点のエントリー作品すべてに世界ランキングが与えられる。また、たとえランキングから漏れてしまったとしても、〈ADA〉は応募者全員に郵送で結果通知を送っており、愛好家同士の繋がりを感じることができるのだ。
頭の中で描く、思い思いの自然の風景。そこにはどんな植物が生えていて、どんな魚が棲息していて、それらがどのように共生しているのかに考えを巡らせ、レイアウトし育てる。ネイチャーアクアリウムを通すことで、都会で生活しながらも自然と触れ合う貴重な体験ができるのだ。
参加費も無料のため誰でも気軽に参加できるコンテストなので、興味のある方はぜひトライしてみてほしい。自然に対する新しい気づきや、都会における自分だけのオアシスを作る新しい趣味が見つかるはず!
「ガラスケースとLEDで植物を愛でる。未来のグリーンショップ〈ADA LAB〉が期間限定オープン」では、〈ADA〉のコンセプトショップ〈ADA LAB〉を紹介。ネイチャーアクアリウムに興味を持ったら、是非店頭へ。